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ジャンプ!
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ジャンプ!-10

「貞本さんは付き合ってる人はいるんですか?」

夏川は酔いも手伝ってか、今までは聞きたくても聞けなかった事を直海にぶつける。

直海は即答した。

「いるよ…」

直海は、夏川の想いなど全く無視した。彼が友人から〈冷たいヤツだ〉と言われる由縁だ。

「彼女幾つ?何処に住んでるの?結婚は?」

林は〈我が意を得たり〉とばかりに、矢継ぎばやに直海に聞いた。それを彼は含み笑いを浮かべながら答える。

「歳は30…かな?確か。東区に住んでるよ。それ以上は勘弁してくれ。結婚は……全くないなぁ……」

林と直海の〈演技〉を、真剣な眼差しで夏川は黙って見ていたが、ガマン出来なくなったのか、
〈貞本さん!〉と語気を荒げて言葉を発した。

「…私…貞本さんをずっと…見てきました。私が入社した年に行った汐見野球場で見て以来、ずっと見続けてきました……」

想いを一気に吐き出した夏川は俯いた。林は直海の出方をうかがっているのか、彼の顔を見つめる。
直海は思いのままを夏川に語った。

「悪いが君の気持ちには応えられない。今の彼女が好きだから……もっと早い時期に違った場所で会ってたら付き合いたかったよ」

直後に、直海のスネに衝撃が走る。林が睨んでいた。彼女に蹴られたのだ。〈後半は余計よ!〉と、彼女の目が訴えている。

「でも……これでお別れなんですか?だったらここに来なけりゃよかった。退職されて会いたくなかった……」

ちょっとしたワガママが直海には見える。彼女にすれば〈思い出〉として残るモノを必要としているのだろう。

「夏川さん。君、幾つになる?」

「……言わなきゃダメですか?」

夏川の言葉に直海は笑いながら、

「ダ〜メ!言わないなら当てるよ」

「当てる?」

直海は得意気な面持ちで、

「ああ、手を見てね。見せて…」

夏川は好奇心からか、手を直海の前に出す。彼は彼女の指を軽く握るとおもむろに、

「29?」

夏川はやや驚きながら、

「当たってる!来月30です」


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