結界対者・終章-13
春日がアイマスクをしたから、か……
つまり、こちらの動きは全てお見通しって事だったらしい。全く、なんて奴らだ…… しかも、散々回りくどい言い方をしていたが、ようするに簡単に言えば間宮を
「還して欲しくば、例の力を目覚めさせる方法を教えろという事か、のう? サオリよ」
「…………」
アヤネに言われるも、サオリさんはうつ向いたまま、言葉を無くしている。
「サオリさん、大丈夫……」
俺も話しかける、だがその刹那、うつ向いたサオリさんの眼差しが剥き出しの刃物の様な鋭さを帯ている事に気が付いて、そのまま声を飲み込んだ。
「…………セリ、待っていて。お姉ちゃんが、いますぐ助けに行くから」
呟き、そして、唇を噛み締める。
「小僧、急がねばなるまい。あ奴らがセリをそのままにして、こちらが赴くのをおとなしく待っているとは到底思えぬ」
ああ、わかってるさ!
「行きましょう、間宮を連れ戻さなきゃ」
力強く頷き、既に暗くなってしまった壺の中を再び睨む。
間宮、無事でいろよ!
―4―
菅澤の屋敷を出て再び走り出した俺とサオリさんは、瞬く間に屋敷の周りの森を駆け抜け、再び時の流れが停まったままの街へと戻りつつあった。
高まる緊張感のせいか二人は互いに無言、車の中には大男の叫び声を鑢で荒く研いだ様なエンジン音と、ビリビリと車体の何かが軋む音だけが両耳を裂かんばかりに響いている。おそらくこれはこの車が、その女の子然とした可愛いらしいデザインには有り得ない程の、全開走行の最中にある事の表れなのだろう。
相当なスピードだな……
ふと、そう思ったのは、危機感や恐怖感からではない、そう純粋に感じただけだ。今の俺にはそんな感情は無い、寧ろ出来る事ならもっとスピードを上げて欲しい。
一刻も早く間宮のもとに辿り着き、彼女を助け出す為に。
しばらくすると、凄まじい速度で迫る景色の彼方に、そびえ立つ白い建物が見えて来た。
思えばアレは、初めて見た時は只の大規模なゲームセンターだった。それが樋山との決戦の場所になり、やがて悲しい記憶の場所となり、今は……
「まるで、悪魔の要塞ね」
知らずのうちに同じ方向に視線を合わせていたサオリさんが、ありったけの嫌悪感を含ませた様に呟く。
悪魔の要塞か……
すると、さながら、間宮は助けを待つ姫で、おれは騎士といった所だろうか。
いや、あの間宮がお姫様ってのは無しだな……
とにかく、騎士の様にとは行かないまでも、俺は絶対に間宮を助けてなければ。いや、助けてみせるさ。
辿り着いた楽箱は、相変わらず廃墟の様な様相で、既に外壁にはいくつかの落書きがスプレーで描かれていた。