Betrayar-12
「誰が貴方の上司に送ると言ったの?」
「貴方、何を?」
「新日本熱学社長宛で送ったわ。バイク便でね。せいぜい身の振り方を考えておくのね」
「そんな事したら、貴方もタダじゃ済まないわよ!」
相原はヒステリックにあがきを見せるが、綾子はそれを一笑に附すと、
「それがあればね……」
電話が切れた。
相原は慌てて16階に戻ると、更衣室へ向かいロッカーを開けた。
「なっ!!」
そこには、綾子と鷹谷の情事を撮ったビデオや写真を収めていた鞄が無くなっていた。
相原は設計部のフロアに戻ると、鷹谷を探す。が見当たらない。
「鷹谷は?鷹谷君はどこ?」
「さあ、さっき部長と出て行きましたけど……」
その時だ。相原のデスクの電話が鳴った。
相原は受話器を取った。相手は社長秘書からだった。
「すぐに社長室に来て下さい」
(終わった……)
意気消沈して社長室を訪れると、社長や役員、設計部部長と共に、鷹谷の姿があった。
「鷹谷!アンタッ!」
掴み掛ろうとする相原を部長が止める。
「大変な事をしてくれたな。しかも、部下の鷹谷君までも巻き添えにして」
「なんですって!!」
部長が続ける。
「鷹谷君は良心の呵責に耐え切れずに私に打ち明けてくれたんだ」
鷹谷はうなだれた様子で、黙っている。
常務の猿渡が相原に言った。
「立件されれば恐喝罪だろう。だが、高砂さんは事を穏便に済ませたいとおっしゃってくれている」
猿渡は中指で眼鏡のズレを直すと、言葉を続けた。
「辞表を出してくれ。依願退職扱いにするから」
「そんな……」
相原はズルズルと床にへたり込むと、泣き崩れた。
それを見た鷹谷はニヤリと笑った。