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Betrayar
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Betrayar-11

ー翌週ー

相原は屋上にいた。人目につかないように。

そして、ジャケットの内ポケットから携帯を取り出すと、電話をかけだした。

すぐに代表電話が掛かる。

「高砂建設です」

「新日本熱学の相原と申しますが、設計部、部長代理の真木綾子さんをお願いします」

〈お待ち下さい〉という声の後、すぐに真木綾子が出た。

「お久しぶりです。相原さん」

柔らかい物腰の余裕の表情が相原の頭に浮かぶ。

「こちらこそ。実は貴方にお願いがあって」

相原はいきなり本題に入った。

「今度の第4期工事。ウチの主張を入れてもらいたくて」

その言葉に綾子は即答する。

「それは出来ないお願いね」

ここまではシナリオ通りだ。相原は笑みさえ浮かべて言った。

「フフッ、分かってないようね。私、無理強いはしたくないのよ」

「どういう意味?」

相原は完全にイニシアチブを握っていると思った。

「貴方とウチの鷹谷の情事。写真、ビデオも含めて差し上げたいの」

「それで……?」

「その代わり……分かるでしょう」

しばしの沈黙。相原は口の中が渇いていくのを覚えた。

そして、綾子の言葉が発っせられた時、彼女は耳を疑った。

「残念ながらやっぱり無理ね」

相原は逆上していく。

「あ、アナタ!自分が何を言ってるのか分かってるの!」

カン高い声で叫ぶ相原に対して、綾子は終始冷静に答えた。

「貴方が言った写真とビデオの存在も確認していないのに、そんなデリケートな問題に即答出来ないわ」

「今まで鷹谷から受け取ったでしょう!」

「さあ、知らないわ……代わりにこんなのが有るわよ。
貴方が私を脅すために鷹谷君に指示を出している様と、勤務時間中、会社の更衣室で情事に浸ってるところが撮影されたビデオが」

「なんですって!」

相原の声がさらに1オクターブあがった。

「ついでに貴方との今までの経緯……そして、この電話の内容も一緒に送らせてもらうわ」

今や話のイニシアチブは、完全に綾子が握っていた。

「そんなもの送ったって、私の上司は理由を言えば分かってもらえるわ」

相原は混乱しだした頭で、言い放つ。


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