独身最後の夜-6
「そう、もっとお尻・・・高く上げて。」
言われた通りに、獣のような姿を晒す明日菜。そんな明日菜の腰に手を添え、柿崎は自身を再び明日菜に送り込む。
「あんっ!あああああっ!」
再び押し広がる快感に、明日菜は体を反らせて応える。パンッ、パンッと体がぶつかりあうたび、快感が奥底へ送りこまれる。
「ふあっ、はあ、ああん!あんっ!いいっ!ああああっん!」
バッグから、対面座位、最後は正常位と体位を変え、次々と届けられる快楽に、明日菜は一人で何回もイってしまった。
「せ、せん、ぱ・・・も、もう、らめぇ・・・。あんっ、ああっ!はああんっ・・・んっ!」
「お、俺も、もう・・・ダメ・・・だっ。はあ、はあ、最後・・・イク・・・ぞ・・・。」
「はあ、キテ・・・来てぇ!あんっ、あああんっ!あっ、イイいいいいっ・・・!」
事を終え、落ち着いた二人は、ベッドに横たわっていた。明日菜の目隠しは外されていたが、二人は仰向けになったまま、まだ目を合わせられず、無言でいた。
「先輩、あたし、先輩に言わなくちゃいけないことがあるんです。」
沈黙に耐えかねたかのように、明日菜が口火を切った。
「何?」
「・・・あたし、来月いっぱいで会社を辞めることになりました。」
「・・・知ってた。」
「え?どうして?部長から聞いて?」
「いや、正確には、気づいてた。かな。」
「そう・・・ですか。」
明日菜はそれ以上、何も言わなかった。言えなかったというのが正しいのかもしれない。たぶん、柿崎は、明日菜が、柿崎と同じように仕事の夢を描けていないことに気づいていたのだろう。そして、今週、転職を決めてしまっていたことも。言わずとも何か感じとっていた。それだけ、長く一緒にいるし、お互い心 を開いていたからだ。もしかしたら、こういう関係を持つことを許したことにも、何か感じ取っていたのかもしれない。そういう仲だった。お互いに。それが、なんという感情で、なんという関係になるのかは、二人ともわからなかった。ただそこには愛や恋とは違う、何か強い結びつきがあった。ただ、それだけだった。
ベッドの中、先輩は、そっと私の手を握ってきた。温かい先輩の手。
「なんか疲れた。おやすみ。」
ぶっきらぼうにそう言うと、柿崎は目を閉じてしまった。
「おやすみなさい。」
明日菜も優しくその手を握り返すと、そのまま眠りに落ちていった。
朝、目が覚めると、先輩の姿はもうなかった。
――1週間後――
『おめでとう!』
『おめでとうございます!』
『幸せになれよ〜!』
柿崎は、予定通り、結婚式の祝福の中にいた。チャペルからの祝福の退場ロード。
「柿崎先輩!おめでとうございます!」
明日菜は、精一杯心を込めて、祝福の言葉を贈った。柿崎は、振り向きながら最高に幸せな笑顔を見せていた。
それから、約1ヵ月後、明日菜は会社を辞め、柿崎の元を離れていった。
充実し、幸せだった思い出と、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ切ない思い出を抱えながら。