「あなたがいない、これから」-4
私は、冷たくなった手のひらを、兄の頬に当てた。
「あったかい」
そう言った瞬間、目の前が真っ暗になる。
兄の腕に抱かれているのだと気付くのに、少し時間がかかった。
力強く、抱きしめられる。
「俺は………」
兄が苦しそうに言った。
「俺はお前を妹だと思ったことは一度もないから」
兄の表情はわからなかったけれど、その声で、兄が私に何を伝えたいのかはわかる。
嬉しくて、悲しくて、どうしようもない。
言葉にしたくても、うまく浮かばなくて。
声を出したくても、上手に出せない。
もどかしくて、必死に兄の背中を抱きしめた。
それに答えるように、そっと抱きしめ返すその腕が、その指が、
愛しくて愛しくてしかたがなかった。
一生懸命、声を絞り出す。
「いってきます。お兄ちゃん」
あなたがいないこれからが、何色に輝くのか、まだ私には想像もつかないけれど。
あなたがいないこれからが、今日よりもっと輝いてくれたらいい。
そして生まれ変わったら………
今度こそ、あなたと。
【完】