「あなたがいない、これから」-2
お兄ちゃんはなーんにも言ってくれないんだね、と言って小さな頬をぷっくりと膨らますふみを見て、思わず笑みがこぼれる。
「ちゃんと聞いてるよ」
俺がマジメに答えているのに、ふみは相変わらず拗ねたままだ。
俺がふみに恋をして、もう十五年が経つ。
そしてふみに出会ってからも、ちょうど十五年。
腹違いの兄妹だけれど、俺たちはとても仲が良かった。
周りからは異常だと笑われたこともある。
でも俺にとって結論は、至極簡単なこと。
俺はふみが好きなんだ。
最近、ふみが俺を、お兄ちゃん、と呼ぶようになった。
何も言わなくても、
俺にはわかる。
とうとうその時が来たのだと悟った。
別に一生の別れではない。
お互いが、大人になっただけ。
他人になってしまうわけではないし……………
他人になれるわけでもない。
だから、離れるんだ。
「北海道と、東京は遠いかな」
俺がまだ頬を膨らませたままのふみに言うと、ふみはぴくりと小さな肩を揺らし、ゆっくりと振り向く。
その目には、涙が浮かんでいた。
「遠くないよ。飛行機ですぐだもん」
ふみは俺を真っ直ぐに見つめてそう呟く。
「ふみならすぐ、東京に馴染めるよ」
俺がそう言うとふみは、今にも泣き出しそうな顔でにこりと笑った。