甘辛シロップ-3
「なっ…なんで近付いてくるんですか」
「耳貸せ」
「い、嫌ですよ。 どこまでも馬鹿ですね、あなたは……ち、近っ!?」
そして強制的に耳打ちされました。
…お約束ですけど。
淑女たるものの、卑猥な言動は慎みたいので自主規制ということに…。
ちらりとショウちゃんの顔をお伺いしたところ、どうやらその赤面を見る限りは
ある程度、本気のご様子で。
私としては意味が解りかねまして。 驚倒なんてレベルじゃありませんよ。
アレですか、一種の流行というものですか。 私には死んでも理解できねーですよ。
男同士の契り? 馬鹿馬鹿しいにも限界がありますって。
男性にお構いなく抱きつき、何よりも好きな花は「薔薇」………。
前からそういうニオイはしていましたが、まさかショウちゃんにも……って、有り得ない。
世界は半端じゃなく広い…冗談が過ぎるぜマイブラザー。
………で、既に目の前には変態もショウちゃんもいなくて、時が止まったかの様な世界で
私を不可思議生物か何かと勘違いしてるのではと訴えたくなるほどに変な目で
見てくるギャラリーと…
あの話が真実か虚偽かわからず了いで取り残された絶対零度の私………。
ぐつぐつと、私の中で何かが暴れている。 コレ…何でしょうか。
数日前、誤って口にした少量のキャットフードですかね。
自分の身体故に感じてしまうのは果たして必然なのか…。 非常に重い塊の何かが
私を乗っ取ろうとしている。
どす黒い何かが私の血液を濁らせる。 『凪』である私はというと、今にも
死にそうなくらい苦しい。
白色が黒色によって消されるのと同じ原理かもしれませんね。
「…差し詰め、デウス・パウア…ってヤツですか」
────とまあこんな具合で憎悪心に身を任せ、雪柳宅に向かって歩いている途中です。
本当は雪柳宅なんてどこにあるか全く知らなかったんですけど、本来人には無いはずの
六感が働いちゃったみたいで、脳内で勝手に場所を察知させて頂きました。
故人曰く「子供は皆ナントカカントカ」ですから、当然と言えば当然だったり。
いやー楽しい。 今から奴をどうしてくれようかと考えるだけで
テンションハイなこの気持ち。 神の力よ栄光に、いやっはー。