ベルガルド〜闇の薔薇と解放〜-1
「はぁ!!?」
ベルガルドとカイは一歩後ろに引き下がった。
目の前には通せんぼするように両手を広げているアーレン国の女王がいる。
「ですから、私も連れて行って欲しいと頼んでいるのです。」
トゥーラは頑なな態度を崩さずそう繰り返し、謁見の間から出ようとする二人の前に立ちはだかる。その様子を目の当たりにして、セシルと副団長が駆け寄ってきた。
「トゥーラ様!!どうして?!スベニ国の調査に同行させるなら、女王本人が行くことないじゃない!!」
「そうじゃ!なんならわしがこの魔族どもに同行しても構わないのですぞ!!」
トゥーラは二人に困惑したような微笑を投げかけるが、一向に動く気配がない。
「ダメなのよ・・・他の人に代わりはできない。この事件はアーレン国王家の内部に関わっている可能性があるの。」
ベルガルドは怪訝な顔をした。
「どういうことだ。科学者殺しの事件がどうしてそこに結びつく?」
「トゥーラさん、事件のこと何か知ってるの?」
トゥーラはその黒い瞳を曇らせ目を伏せる。そして首を振った。
「まだ仮説の範囲内なの。軽々しく口に出せることではないわ。だからこそ・・・確認のために私を同行させて欲しい・・・」
「だめだ。」
ベルガルドはそれ以上聞く耳持たないという様子で突き放す。
「魔族とヒト。俺達のように互いを信用していない者同士の旅は、結局うまくいかない。それに、お前を同行させるメリットが俺たちにも無いんでな。」
「そうそう、でもベルが本当に言いたいのは、女の子が無闇に出歩くと危ないってことなんだ。そこをわかってあげて欲しい。」
カイは困ったような顔でトゥーラに微笑んだ。
しかし、トゥーラの決意は全く揺るがないようで、セシルの方をちらっと見ると、再度たたみかける。
「こちらには優秀な護衛団もおりますのでご心配なく。それに・・・メリットなら十分にあると思いますが?」
「言ってみろ」
「スベニ国はそれ自体が不透明で閉鎖的な国です。国内には、立ち入りを禁止されている箇所がいくつもあると聞きます。さらにスベニ国はヒトの国ですから、魔族に非協力的。自由に動ける範囲も狭まるでしょう。」
「・・・。」
ベルガルドは考え込むように腕を組み、押し黙った。
「ですが、私が同行すれば、ヒトの国最大、アーレン国女王の権力を行使できます。」
トゥーラはそう言った後、少し言葉が悪かったですね、と付け足した。
「ベルどうする?確かにトゥーラさんの言う通りだけど・・・」
「そうだな。・・・足手まといにならないと約束できるなら・・・」
トゥーラはにこっと笑った。
「同行しても良いですね?」
ベルガルドは釈然としない面持ちでしぶしぶと頷いた。