ベルガルド〜対峙〜-5
「あの男から魔力は感じたか?」
「うーん・・・正直、感じなかったと思う。ただ、あの対魔族用の兵器から流れる魔力が散乱していたから、断言はできないかな」
「そうですか・・・。ヒトである可能性もある、ということね」
トゥーラははっと思いついたように顔を上げて、セシルに指示を出し、何かを持ってこさせた。
それは、泥で汚れた一枚の手紙だった。
「今度はなんの手紙だ?」
「ある人物から送られてきた手紙です。あなた達に話があると言ったのはこれのことで・・・」
そう言うとカサカサと便箋を取り出し、内容を読み上げた。
『親愛なるトゥーラ女王陛下。
いま起きている科学者殺しの事件は、ヒトだけで解決できる問題ではありません。
どうかベルガルド王に会って下さい。
そして伝えて欲しいのです。
“全ては10年前から始まっている”と』
「・・・内容はそれだけか?」
「ええ、この手紙を見た時は悪戯かとも思ったんだけど、どうしても気になって。何か心当たりはありますか?」
「送り主は誰だ・・・?」
「封筒には“ラルフ”とただそれだけ・・・」
「!?」
ベルガルドとカイは目を見開いた。
「ベル!ラルフがどうしてそんなことを・・・?」
「あいつ・・・っ!今度は何に首突っ込んでんだ!」
トゥーラは訳が分からないというように二人の会話を聞いている。
「ラルフさんというお知り合いがいらっしゃるのですか?」
ベルガルドは渋々といった形で答えた。
「・・・俺の弟だ」
「え!!?」
「トゥーラさん!この封筒がドコから投函されたものかわかるかな!?」
カイがトゥーラに問い詰める。
「えぇっと、アーレン国内ではないわね。隣の小国よ、スベニ国からだわ。」
ベルガルドは深いため息をついて腕を組み、キッとカイを見上げた。
「カイ、次にやることが決まったな」
(嫌な予感・・・)
「スベニ国に行って、あのバカから直接話を聞いた方が早い!」
「結局またこれだよ・・・」
カイはがっくりと肩を落とす。
彼らの旅はまだまだ続く・・・らしい。
ただ、ベルガルドには一つ心に引っかかることがある。
“10年前から始まっている・・・”
(俺とラルフが10年前に経験したこと・・・か)
ベルガルドの中では大きな心当たりがある。
しかし今は、弟に会うことが先決だと判断したのであった。