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ベルガルド
【ファンタジー その他小説】

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ベルガルド〜対峙〜-3

ガシャ!

「!?」
見ると副団長が大振りの剣を抜き、ベルガルドとカイの方へと向けていた。
「貴様ら魔族がなぜこのアーレンの地に赴いた!!この国は貴様らが来て良い所ではない!!」
「そうよ!早々に引き返しなさい!!」
女王の側に控えていた少女も前に出てきた。
小柄な少女で、身長はベルガルドよりも低いくらいだ。
茶色のストレートヘアを、横の高い位置で結んでおり、金色の帯を締めた民族衣装のような格好をしている。
ミニスカートのようになっており、細く白い足をすらっと露出させ、底の高いげたを履いており、その足をだん!と踏み鳴らした。
「あたしは女王護衛団団長、セシル!!我らが女王陛下には指一本触れさせないわ!」
セシルと名乗った少女は武器を何も手にしていないが、どうやら体術を得意としているらしい。独特の構えで臨戦態勢に入った。

ベルガルドとカイも、このピリピリと緊張した空気の中で、今まで封じていた魔力を開放しようとした時だった。

「やめなさい!!」

女王が護衛団の二人を制止した。
「この方たちは大事な客人、無礼は許しません!」

護衛団の二人は硬直し、そのまま顔だけを女王の方へ向けた。
女王の合図を確認すると、セシルと副団長はしぶしぶ一歩後ろに引き下がっていく。
しかし少し離れた場所から鋭い目でカイとベルガルドを監視しており、少しでもおかしな真似をしたら殺す、という無言のプレッシャーを与えていた。

「招かれた覚えはないはずだがな、手紙ではあんたがレオーベンに来ることになってた。」

ベルガルドはトゥーラを試すように言った。

「手紙?・・・っ!?まさか、ベルガルド王がじきじきに来られたのですか!?」
女王は目を見開いた。

(こいつ、魔族ということはわかるが、王だとは知らなかったのか?)

トゥーラは椅子から降りると、ベルガルドの方へは見向きもせず、カイの方へと駆け寄った。
「数々のご無礼お許しください。まさかベルガルド王のご一行だとは存じ上げませんでした。」
トゥーラはぺこりとカイに向かって頭を下げた。

「は・・・?」

ベルガルドとカイは今まで出したこともないような、間の抜けた声を出した。

「え、は・・・?僕に言ってるの・・・?」

カイはうろたえた。ベルガルドの方へ助けを求めるような視線を送るが、ベルガルドは機嫌が悪そうにじーっとカイを見ているだけだ。
無理も無い。
白馬の王子様を絵に描いたような青年と、赤髪赤眼の生意気そうな少年。
どちらが王に見えるか?

「あの・・・ベルガルドは僕じゃなくて・・・そっちだけど」
「え?」

トゥーラはカイが指差した方を見る。そこには不機嫌そうにそっぽ向いたベルガルドが立っていた。

「は・・・?嘘でしょ・・・?」

女王はぽかんと口を開けたまま固まった。
間の抜けた顔と共に、さっきまでの冷静を装った口調まで消えて、完全に素が出てしまっている。
ぷっ。
その様子を見ていたカイとセシルが我慢できずに吹き出した。
同時に吹き出してしまった両者は顔を見合わせた後、大爆笑し始める。
副団長は白ひげをいじりながら目をぱちくりさせ、いまいち理解が追いついていないようで、女王の方へと視線を投げるのだが、その女王はというと、はやとちりしてしまった自分を恥じるように、うつむいて顔を真っ赤にしていた。


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