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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第17章-20

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人間が憎しみの炎に魂を焼かれると、その人間は鬼になる。

狗族が、その心の内に憎しみの業火を宿したときにはあなじになる。



そしてそのいずれも、闇に属する『堕ちた』存在。

風炎が神立に、そして神立が飃に語ったのは、黷が欲しがっているものを、どうやって手に入れるか…その方法だった。



澱みは、子孫を残すことが出来ない。澱みの数を増やすことは出来るが、それは自らの身体の一部を切り落とし、そこからもう一つの単体を作るだけで、それは生殖には当たらない・・・分裂だ。

黷と、その身体から生まれた全ての澱みは、『子』を欲しがるようになった。何故子をほしがるのかも、いつのことからかも判らない。この世に生じた時からの願望、或いは本能かもしれないし、そうでないかもしれない。その欲望ないし本能の結果が形になったものとして、現在この国に居るほとんどの澱みは、元は黷の身体から分裂し、黷の『子供』と呼ばれる。

だが、黷はそれに満足しては居なかった。

『性交とはどのようなものか。』

彼は試した。何人もの神族や、妖怪の女を攫(さら)って。そしてその度に、女は黷の毒気に汚染され、子を宿すどころか、生気と正気とを失い死んでいった。

黷は人間でも試してみた。今度は人間供のように脆くはなかった。だが、人間との性交は澱みにとって危険を及ぼすこともわかった。あまりに深く繋がりすぎてしまうため、その人間のの生気と、正の感情を一度に多く摂取しすぎてしまう。生気のオーバーロードによって、澱みのほうが消されかねないのだ。



黷は思った。



狗族が脆い故に吾を受け付けず、人間の生気が強力すぎるが故に吾を受け付けぬのならば…



人間と狗族の血を半分ずつ持つ、あの娘を使えばよい。



さらに、闇に近づけるために“堕”とせば、より『子』を宿す可能性も増すことだろう。

そのために、黷は何年も、何年も前から準備をさせてきた。



そして、その計画は、少しずつ、文字通り実を結ぼうとしていた。



「さくら!!」

血まみれの彼女が、倉庫の冷たい床に寝そべっていた。気は失っていない…かすかに震えて、すすり泣いているから。

「こないで…」

か細い声が、飃の足を止めた。ひどく弱弱しい…聞いたことが無いほど、弱弱しい声だった。

「…見ないで…」

彼女は、血の海の中に横向きに倒れ、胎児のように体を丸めて、痙攣しているように絶え間なく震えながら泣いていた。

「さくら…」

飃は、少しずつ、彼女に近づいた。


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