投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 218 飃(つむじ)の啼く…… 220 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

飃の啼く…第16章-2

「ふっ」
ストローの包み紙を、ぼーっとしてる茜に発射する。
「っぅを」
変な声をあげて、茜が白昼夢から帰って来た。
「たまには茜が愚痴りなよ!」
にやにや笑ってやる。喜んで相談にのってやる、というこの意思表示法は茜から学んだものだ。去年末からこっち、茜の体調は目に見えて悪化した。
「疲れてんでしょ?」
なかなか言い出さない茜に助け船を出す。
「ん〜…なんかね…」
ようやく話しだしてくれた。

「帰るじゃん?ご飯作って食べて…そうすると…もう、なんかどうでもいいや、みたいな…そんな感じになる。」
少し自棄になって、茜は笑う。
「勉強のこと?」
「うん。まぁ、そんなとこ。」
…怪しい。
ここのところ、すっかり用心深くなった私の第六感が、何かあると告げている。
「そんなとこ、って…他に悩んでることがあるんじゃないの?人間関係?体のこと?」
いつになくまじめな表情の私を、茜が小突いた。
「人の日常で“名探偵”するなよ!」
またニヤリと返す。かけてもいない眼鏡をくいっとあげた。
「実はこれリボン型麻酔銃なんだぜ。」
制服のリボンをつまんで掲げる。ふざけて茜に狙いをつけると、
「か〜っ!どおりで授業中眠くなるはずだよ!」
と指を鳴らした。
「茜、私の後ろの席じゃん。」
爆笑。あぁ…こんなに笑うのは久しぶりなんだ…。飃と居れば安心で、心地良いけど…爆笑って雰囲気じゃないから。むしろ笑ってるのは私じゃなくて飃のほうだ…意図するにしろしないにしろ、笑わせてるのは私だけど。
「あぁ…久しぶりに笑った。」
茜が同じことを言う。
「ねえ、じゃぁ、彼氏とはうまく行ってるの?謎の日向君。」
最近話題に登らなくなった、茜の彼について聞いてみる。すると、茜が弾かれたように顔をあげた。
私は、茜の彼氏に会ったことがない。茜曰く、写真を撮られるのを極端に嫌う性格らしく写真も、プリクラもないから、私は彼のことについては何となく想像するしかないのだ。おまけに、学校で見掛ける事も無い。正に謎の彼氏だ。とはいえ私も、人の姿をした飃を茜に紹介していないから、お互い様なのだが。
「ねえったら。」
茜の目は、私を通り越してずっと遠くを見ていた。まるで一時停止ボタンを押したみたいに微動だにしない。私が振り向いて茜の視線の先を見ようとすると、茜の再生ボタンが押された。
「え?彼…あ、あいつね!」
髪をかき上げて、ちょっと照れ臭そうに言う。
「うまくやってるよ…」
自称恋愛経験抱負な茜に、後輩として抱いた率直な疑問をぶつけてみる。
「茜さぁ彼と、その…半同棲でしょ?……したの?」
わかってる。かなりはしたない質問だ。だが、気になるものは気になるし…
「な!?」
茜は、その名前が表す色の通りに染まった。あれ?
「してないに決まってるじゃん!」
「なんだ〜、茜も一人暮らしだからてっきり…あはは…」
「ったく!はしたないぞ!さくら…」
髪をかき上げ、左手で顔を仰ぐ茜、意外と奥手だという一面を垣間見た小春日和の一時だった。
「まぁ、でも仲良くやってるなら、ね。」
少し…安心したよ。
「うん…ありがと。」
言葉に出さなかった私の気持ちを当たり前の様に読んでしまう茜…茜はすごい女なんだ。


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 218 飃(つむじ)の啼く…… 220 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前