飃の啼く…第16章-16
「これはあの金狐につけられた傷。」
鎖骨の下の丸い傷跡
「これは琉球の澱み」
背中の鉤爪に引っかかれたような傷
「これは蝦夷か。」
腰を斜めに横切る大きな傷
「これは狗族の鎌」
そうして、全ての傷跡と、その原因を確かめていった。私でさえ忘れてしまった沢山の傷跡…敏感な神経がびりびりと痺れるように疼いた。
「ん…っ。」
腿にある、ついこの間出来たばかりの大きな傷跡を嘗めあげられて、つい声を漏らしてしまう。
「痛むか?」
「そう、じゃなくて…」
今や涙目で飃を見た私を、にやけた笑い顔が見返していた。
「いつ音を上げるかと思っていた。」
そして、鼻で腿の輪郭を辿りながら、奥へと…
「だ、飃…駄目…っ」
スカートのしなに潜った頭を引っ張り出そうともがきながらあわてて言う。
「こんなものを履くから傷が付く…短所ばかりだと思っていたが…なるほど。」
「な、ななな、なに!?」
くすぐったいのと恥ずかしいので声が上ずってしまう。
「長所もある。」
そして、ほとんど熱いといってもいい舌が、下着の上からそこを嘗めた。
「…っ!」
力が抜けてしまう。飃が私の脚を開かせるのに、たいした力は要らなかった。
「ん…ぁ…駄目、ぇ…」
この期に及んでまだそんなことを言う私に少し笑って、飃は舌を中に入れてきた。
「あ…っ!」
私はなす術もなく、抵抗もせず、手だけはぎゅっと握っていた。嘘みたいに静かな学校で、何かを起こしてしまうのを恐れたくなるほど声を上げてしまう。
「だめっ…飃…!来ちゃう、からっ…!」
本当に本当にようやく飃が顔を離してくれた。私は息も絶え絶えで、力はほとんど入らないくせに心臓だけは早鐘のように打って居るのを感じてベッドに倒れこんだ。
そして、飃をちらっと見た。
「…飃のせいだ。」
飃はあの挑発的な笑みで私を見る。
「何が?」
私は、せめてもの照れ隠しに枕に顔をうずめた。
「…我慢できなくなった。」
飃の体重と温かさを背中に感じて、それだけで体がまた熱くなる。耳元で、飃が聞いた。