旅立ちの日-5
土田や美那と、里香とのデートプランを練り上げる。が、なかなか良いアイデアが浮かばない。
これ以上話し合ってもラチがあかないと思った一巳は、里香に直接聞く事にした。
彼女が通う高校は女子高だ。
下校時間に一巳が待ってては目立つし、里香に迷惑が掛かる。そこで美那が目立たない場所まで連れ出す事になった。
一巳は正門から少し離れた場所で待つ。
美那に事情を聞かされ、その場所に来た里香だったが、一巳の顔を見た途端、〈キャア!〉と奇声を上げて、来た方向に駆け出した。
一巳は〈なんで?〉と思い、慌てて里香に駆け寄る。彼女の前に廻り込むと、
「ちょっと!何で逃げんのさ」
顔を真っ赤にして逃げる里香の腕を掴む。彼女は〈イヤッ!〉と言いながら、掴まれた腕を振り払おうとした。
「なぜ避けるの?」
里香は顔を赤らめて、俯いたまま、
「……髪…」
「エッ…何!」
美那は一巳の耳元で、
「一巳さん。里香ね、髪切りにいって前髪切り過ぎたんだって」
「ち、ちょっと美那ちゃん!」
里香は焦ったそぶりで美那に駆け寄る。逃げる美那。
「あのさ…女同士でじゃれるのはいいから……本題に入ろうよ。それに髪、全然変じゃないから」
里香は顔を赤らめたまま、
「…ありがとう。〈揃える程度〉って言ったのにこんなに切られて……」
確かに短くなっていたが、前髪のどうこうなど一巳には分からない。
「むしろ似合ってるよ」
一巳の言葉で彼女に笑みが戻った。
里香の帰り道に付き合って、一巳達は本題に入る。
「里香ちゃん。何処に行きたい?」
しかし、いきなりの質問に彼女も満足な答えが出ずに、
「何処でも良いです……任せます」
この答えにより、一巳はデートだけでなくプランまで考えさせられる事となった。
ー午後10時ー
バイトを終えての風呂。立ちっぱなしの仕事はさすがにキツい。一巳は、湯船につかりながら脚をマッサージする。
風呂から上がると遅い夕食。食べながら一巳は里香とのデートプランを考えていた。
だが、止めた。考えながらモノを食うのは美味くない。一巳は夕食に集中した。
食事を終えると11時。一巳は、自室に入ると再度デートプランを考え始めた。しかし、30分もすると睡魔が襲ってくる。結局、デート・プランは思いつかないまま就寝となった。