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つかの間の愛情
【その他 恋愛小説】

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旅立ちの日-12

「じゃあ、始めますか!」

2人は手早く顔を洗って料理に取り掛かった。

朝9時。美那の家の前に2台のバイクが表れた。一巳と土田だ。2人共、皮ジャンを着ているからか異様に見える。
しばらくすると美那と里香が出てきた。2人共リュックを背負っている。

「おはよー!良い天気になって良かったね」

美那は元気いっぱいに言った。

「おはようございます」

そう言って頭を下げる里香。タイトな黒のパーカーにスリムのブルージーンズ。先日とは違うスポーティーな雰囲気だ。

「それじゃ今から〇〇の知り合いの家に向かうから」

一巳はそう言うと土田と一緒に2人を乗せて〇〇を目指した。



県道〇号線の山道をひたすら西に走ると、バイパスの合流地点に出てくる。そこをは左に折れて南を目指す。
しばらくすると風の匂いが変わる。単なる風から潮の香りが混ざってくる。



〇〇に着いた。時刻は11時。夏の間、盛況だった海水浴場には打ち寄せる波の音だけが響いてる。
一巳達は、そこから500メートル程離れた大きな民家にバイクを止めた。
築100年はなる古い屋敷はそれだけで100坪はあろう程の大きさだ。引き戸の玄関を開けると広いコンクリートの土間になっている。

一巳は中に入ると家主を呼んだ。
「こんちわ〜!〇〇の藤野ですが」

中から〈は〜い〉という声と共にパタパタとこちらへ近づく足音が聞こえる。

「どなた?」

40後半の女性が出てきた。

「〇〇の藤野です、叔母さん」

一巳の言葉に叔母は破顔すると、

「あら〜!久しぶり!大きくなって。幾つになったの?」

「今年で18です。今日は友達と一緒で…それで、〈庭〉を貸してもらえないかと」

叔母は笑いながら、

「そんな事、わざわざ言わなくても黙って使っていいのに。姉さんは元気?」

「エエ、お陰様で。じゃあ遠慮なく借ります」

一巳と叔母の会話を聞いていた土田達は不審な面持ちで、

「〈庭〉を貸してくれって、どういう意味だ?]

「オマエが今居る場所がそうさ」
その家の玄関から200メートル先は、海につながる砂浜だった。

「ひょっとして、ここでピクニックするのか?]

一巳はごく平然と、

「ここら辺は、叔母さん家の土地なんだ。だから誰も入って来ないんだ。まあ外国で言うプライベートビーチだな」


一巳はレジャー用の椅子とテーブルを叔母から借りると、砂場にセットする。
彼女達は、リュックからランチボックスや水筒をテーブルに広げていく。
一巳は土田と2人、待ってる間タバコを吹かしながら相談していた。


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