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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Whirlwind-1

射精のリズムにも似た血潮の噴出が、止める術も無く降り注いでいる。鉄臭い血の臭いが鼻にこびりついて離れない。血は徐々に凝固し、女を抱いた姿勢のままの男を縛り付ける。

「―――――!!」



今、なんと呼んだ?



耳を聾する轟音は耳鳴りであったろうか。髪をかき乱す爆風は嵐の前触れであったのか。

男は、ただ泣き叫ぶ。そして知る。

自分が…



「―――――!!」



今、なんと呼んだ?



++++++++++++



父の今際の言葉は、今でも覚えている。

―いや、覚えているのではない。思い出させているのだ。夢枕に立つ、父の亡霊が。

『殺せ、ワール。あいつを見つけて、殺せ』



「…親父……。」

今夜も体の血がうずく。満月が近づくにつれて、潮が満ちるように体の中に野生が満ちていく。そして俺はまた、父の夢を見る。



**********



1888年、8月…

鬱陶しい霧の中に沈むロンドンの夏も、もう終わろうとしていた。雨が降ったわけでもないのに、じっとりと湿っている石畳には、下水設備の整っていないこの町の衛生状態を表すように排泄物の匂いが染み付いている。

ホワイトチャペル。白き礼拝堂という清らかな名前からは想像も付かない…ここは貧困と犯罪がはびこる地獄のような地区だ。薄暗い、どこへ続くかわからないような路地が、無計画な都市計画を責め立てるかのように張り巡らされていて、そこいら中に浮浪者やら乞食やらがたむろしていた。

「アリーン?」

そんな路地の中の一つ、乏しい月明かりも息絶えた暗闇の中、うずくまる男の姿。

「アリーン!!」

死んだ人間の体からは、21グラムの体重が失われると言う。だが、彼の腕の中にぐったりと横たわる女の体は、生きていたときよりもずっと重く感じられた。頚動脈からは噴水のように血が噴出し、男の顔に容赦なくかかった。

まるで、逃れられない約束のように…そして、そう。呪いのように。


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