モノクロームは雨に流れて-2
『昨日はありがとう』
最初、誰の声かわからなかった。
俺が余程な顔をしていたのか、横を見るとあいつは笑っていた。
あいつが何故公園で黄昏てんのか。なんで泣いていたのか。どんな名前なのか。
そういう事は、一つも聞かなかった。
代わりに俺も、俺自身のことは喋らなかった。
驚く程の白い肌と、正反対の黒い髪は、夕暮れの空に見事に映えて。だけどそれでも白と黒を主張していた。
モノクロームの女の子。そんなイメージがぴったりだった。
俺は、あいつの姿に惚れていたのかもしれない。
たまに公園に来ては黄昏ていて、俺が発見して他愛もないことを喋って、どちらからともなく帰る。
お互いの名前も知らないまま過ごすという奇妙な関係。
俺は、そんな関係に意外と満足していた。
ある雨の日、街であいつを見かけた。
横に、知らない男を連れて。
最初、あいつだとわからなかった。
白かった肌が、上気して赤くなっていたから。
モノクロームの女の子。
そんなイメージは、あっと言う間に崩れ去り、あいつも普通の女の子だと知った。
帰りに公園によった。
やっぱりあいつはいなかった。
残ったのは、淡い恋心と早く帰る様になった癖。
まぁ、また来たらジュースくらいならおごってやるか。
そう考えながら家へと足を向けた。