Authorization Lover-VOLUME5--4
…何故か銀の隣はとても落ち着いた。
その時も。
どうでもいいのではなく…
今でも本当は…。
「…杉も…」
隣にいたいのか…
「杉本さんっ!」
机をバンッと叩いた音が、雛菊の耳に響いた。
「は、はぁい?」
雛菊は顔を上げ、思わず変な声をだしてしまった。
茶髪のオカッパが、目の前に揺れるのが見える。自分に一斉に集まる目線を感じた。
雛菊は頭をフル回転させた。
…しまった。今、合同会議中だった。
………宣伝部との。
「…企画のモデルさんは余裕やのぅ?会議中に寝るとはなぁ。」
鬼の首をとったかのように宣伝部所属の猿渡日向は皮肉を言う。日向の顔にあるそばかすが、何となく増えているような気もした。
「見た目だけやもんなぁ?企画は。これみよがしにでっかいオッパイ机に乗っけおって。」
「普通にひがみやんけ。しかも杉本さん単品の」
「じゃかぁしいっ!眞二!」
「でっ!」
日向の頭突きが大平眞二にクリーンヒットした。眞二は鈍い声を上げて、机に突っ伏す。
二人の漫才に部屋は冷ややかになった。
「…面白ない漫才はおいといてな、Kデパートのご新規はうちの管轄だったんやぞ?慎んで辞退いうんが利口ちゃうか?」
眼鏡をクイッとあげて、宣伝部主任である矢頭理彩は、低い声で半ば脅しかけるように言った。その途端、眞二は起き上がって叫んだ。
「面白ないってどういうことや!」
「そこに突っ込むんだ?!」
大人しく見守っていた桃子は、驚いていた。眞二は桃子に向き直り、息を大袈裟に吐きながら首を振った。
「桃子ちゃん…関西人にとっては面白ないゆうんは死活問題なんよ。」
哀愁を漂わせながら眞二は悲しげに語る。
「はぁ…」
桃子は最早、眞二のテンションについていけない。
「お言葉を返すようですけど、うちは退きませんよ。」
七緒は対抗か、眼鏡をクイッと上げて話し出した。