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年の差
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年の差-1-5

卒研発表から一週間。
研究室を掃除をする。
一年間お世話になったんだ。綺麗にしなければ。

「北野」
高井が、デスクの上を片付けながら、呼ぶ。
「何?」
「いつ結婚するんだ?」
床を掃きながら、
「私が働き出して、暫くしてからかなぁ」
「ふぅ〜ん…」
高井は、こっちを見ることなく、返事をする。
やっぱり、何か変だ。

私が言うのも難だが、高井の考えてること、思っていることは一応分かっているつもりだ。
一年からずっと一緒だし、部活も一緒。
たまに言い合いになって、喧嘩することもあったが、次の日には、お互い何もなかったかの様に話す。
結構、ディープな話しもする仲だ。
だから…
分かって、しまう。




あいつの考えていることが。



「ねぇ…最近、やたら私の指輪について、気にするよねぇ?」
「んなことねぇよ。受け入れ先が見つかったからって、調子乗らないように釘を刺してるだけだよ。」
茶化すように話す。
「受け入れ先って…私は猛獣か何かかよ」
「猛獣…ピッタリじゃん」
デスクの片付けの手を止め、こっちを見る。
私はゴミをちり取りに取って、ゴミ箱に捨てる。
することを無くなった私は、ちり取りと箒をロッカーに仕舞う。
「あんたはいつも、失礼だね」
高井の前に歩み寄り、見上げる。
「いや、合ってるだろ?」
再び、作業に戻る高井。
私も隣で手伝う。
距離にして30?ほど。
暫く、黙って作業。
そして沈黙を破ったのは、高井だった。
「なぁ…北野」
いつも以上に、真剣な雰囲気。
高井とはこんな雰囲気になりたくない。
こんな雰囲気…






友達』が『男女』に変わる、この雰囲気。


今までとは明らかに違う。
分かっていた。
私は高井とこんな雰囲気になりたかったのだ。



「何?」
作業をしながら、答える。
もちろん、私は高井を見ない。
見たら…全てが終わる気がするから。
研究室は、静かだ。
昼間とはいえ、他の研究生は疎か、先生すらいない。
言わば、高井と密室。



前にもあった、こんな空気。
そう…婚約指輪について聞かれた時だ。



お互い、分かっている。
お互い、目的は一緒。
お互い、欲望は一緒。
お互い…





今、目の前にいる相手が欲しい。


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