年の差-1-4
ウソ…
陸と…結婚?
そんな…
「嫌…か?」
不安そうな目で見る。
私がソファーに座って、陸が床に座っているため、見上げられている形になる。
女の子の上目遣いは聞くが、男性は聞かない。
こんなに、ドキドキするもんだと、初めて知った。
「そんな…訳ないよ!ただ…嬉しくて…こんな私…でも、そうやって、思ってくれる人がいるなんて…」
気付いたら、泣いていた。
今まで陸の前では、何回か泣いたことはあるが、嬉し泣きは初めてだ。
そんな私を見て、陸は隣に座って、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「もう…何泣いてんだよ!そんな嬉しかったか?」
右手で私の頭を撫でる。
「陸が…突然、そんなこと言うから…」
泣きながら、陸の胸に顔を埋める。
「菜海は泣き虫で、寂しがり屋だもんね〜」
茶化すように、耳元で話す。
「…っんなことないもん。ってか、耳元で喋らないで。」
仕返しに陸の耳元で、話す。
陸の体はビクっとなり、口からは官能的な吐息が漏れる。
陸も耳元が弱い。
「なんで?」
「だって…陸と、もっと仲良くなりたくなる…」
再び、耳元で囁く。
「じゃ…仲良くしたらいいじゃん…」
そう言って、私はソファーに倒れた…
「何、それ?」
年は明け、卒研発表の日も迫っている、今日。
パソコンで論文を書いていると、高井がつっこんできた。
「何がって…論文。」
画面を指す。
部屋には再び、二人しかいない。
と、いうのも、他のメンバーは自宅で。自宅のパソコンは、調子が悪いため、私はいつも研究室。
高井は、家に帰りたくないらしい。
「それは見たら分かる。じゃなくて…左手の薬指」
「あぁ…婚約指輪」
どうだ!と、言わんばかりに、見せつけながら、高井に自慢する。
「…ホントに、結婚するんだ」
ぼそっと、呟くように発せられた言葉。
そう言った時の高井は、いつもと違った。
私はてっきり『北野でも、もらってくれる物好き、いるんだなぁ』
なんて、言われると思っていた。
あの反応は…どう説明すればよいか、分からないが、強いて表現するなら…
嫉妬だ。
そんなこともあったが無事、卒研発表は終わった。
発表から一ヶ月弱、卒業まで暇がある。
この一ヶ月で色んな準備をする。
学校の整理。
社会人になるための準備。
卒業式の準備。