BUCHE DE NOEL-5
“別れよ”
“…何で?”
“他に、好きな人が出来たから”
あいつの顔が浮かぶ。俺の胸は押し潰されそうになる。
“ウソだろ?俺だけって言ってくれてたじゃん!!ずっといようって約束したじゃねぇか!!”
“したけどさぁ…”
“何だよ…?”
ぎゅっと目をつぶる。流れてくる映像は止まらない。
“そのときは思ったけど今は思ってないの。そういうの重いんだよね”
オモインダヨネ。
真剣になるだけ重いんだ。
伝わらない。伝えられない。
夢中になるとこうなるんだ。
“ムダナンダ スベテ”
「―――……っ!!」
ぐっと歯をくいしばって、それからゆっくりと息を吐く。思い出しただけでこんなに心が乱れるほど、引きずっていた自分に呆れてしまう。
「人よりちょっと傷付きやすいだけだ」
孝嗣が俺の頭に手をおいた。俺は無言で頷いた。彼等の優しさは俺の傷にはよく染みた。
「横の子、カワイイな」
和也がまりあの寝顔を覗きこんで言った。
「あぁ、タメなのにさ、全然ガキだよ」
彼女はころんと、俺と逆方向に寝返りを打った。フッと笑みが顔に広がってしまう。
「そうか」
二人が顔を見合わせて、にこやかな表情を浮かべた。
「何だよ」
「いや」
「…いいけどさ」
気持ちわりぃよ、と言って俺は窓を見た。雲はもう流れて、窓からは見えなかった。