BUCHE DE NOEL-4
「今部屋の入り口で賑やかなおばさんに会ってさぁ〜」
「なかなかお前のこと気に入ってくれてるみたいじゃん」
「まじで?」
「お前ここが楽しすぎるから、俺たちの見舞いこんなに先送りにしたのか〜?!」
アメフト仲間であり遊び友達が、女子を含めて4人。俺はなんだか懐かしくて気持ちがハイになってくる。
「案外楽しくてさ。まぁアメフトできねぇのは辛いけど」
「えーうちらに会えないのは辛くないのー!?」
ミキ、マヤが口を揃えて言う。俺の人気は相変わらずのようで満足する。
「辛いからメールしてるんじゃねぇか。あ、お前らにも」
「おいおい、俺らは付け足しかよ」
と、親友の和也(かずや)は笑う。もう一人のヤツ、孝嗣はハハ、と大きく快活に笑った。
「お前が復帰してくれないとチームやばいわ」
和也が急に切り出す。コイツと孝嗣くらいしか、俺の奥底まで話そうと思うやつはいない。
「そうか」
「いつ頃には復帰できそう?」
「退院してから2週間だから年あけ。メールでも言ったろ?」
そうだな、と和也は苦笑した。キャプテンがお前の帰りを待ちこがれてんだ、と孝嗣がフォローするように俺にはなす。
「もー!女も仲間に入れてよぉ」
とマヤはぷりぷりと怒った表情をとる。
「ごめんごめん」
俺は自然とスマイルをつくっていた。たいがいこの笑顔で機嫌がとれるということを俺はわかっていた。
「いいよっ。そのかわり今年もXmasパーティー参加してね〜!」
「えらく無理矢理だな」
俺もまわりの野郎も微笑プラス苦笑の表情になる。今年こそそのパーティーに行かないようにしたいところだ。
「今年はもっと楽しめるようにするからさ!お願いッッね?」
「はーい」
俺は返事をしておいた。俺にとっちゃ女の子はみぃーんな大切だから。
一人だけに夢中になるなんて、ありえない。
真剣に好きになっても無駄なんだよ。
「お前、ほんっと調子いいんだからな」
「あはは」
「いつか痛い目見んぞ〜」
“イツカ痛イ目見ンゾ”
もう見たっつーの。
それからXmasパーティーについて少し話をしたあと、女たちはバイトだとかなんとか言って帰っていった。
「さっき、ごめんな」
「いや」
俺は、気にしていないというニュアンスが極力でる発音をとる。
「やっぱ、まだひきずってんだな」
大野(おおの)和也は俺にそうきりだした。室井(むろい)孝嗣は何も言わずに俺のベッドサイドの椅子に腰かける。
「お前、女に対して全然変わったからな、あの時から…。いまだに元に戻んねぇし」
「友達としてのうまいことやる方法を身に付けられただけだよ」
そう言うと、和也は寂しそうに笑った。孝嗣はどこか遠くを見つめている。
俺はまりあを見た。どうやら寝ているらしかった。自然に安堵のため息が漏れる。彼女には知られたくなかった。
「なかなか立ち直れねぇもんだな」
俺は窓の外を見た。すんだ高い空に、雲が早く流れている。
「もう2年もたつのになぁ。由枝(ゆえ)と別れてから」
自然と声が震えた。それを隠すために上を向いて軽く笑ってみたものの、余計に虚しさはつのった。
「お前が悪いんじゃねぇんだからな」
唐突に、孝嗣がそう言った。相変わらず遠くを見ているが、真剣な眼差しだった。
「そうかな」
「そうだ」
彼は言いきる。少し虚しさはやわらいだが、あの頃の記憶が頭の中で動き出す。