年の差-0-4
飲み会も、そろそろお開きになりそうなとき、山川が
「あ、二次会行きましょ!誰か行きませんか?」
と、顔を赤めて言っている。
「はい!私行きます!」
隣の中部さんが言う。
「俺、パス」
と言ったのは、もちろん俺。
「私も…そろそろ帰ります」
と、北野さん。
「お、そうか!じゃ、真下!北野さんを、送ってやれ!真下は地下鉄だろ?」
酔っ払いの課長が言う。
「はい」
「北野さんも、一緒だ。後はみんな二次会行くみたいだから、先に送ってやれ」
「分かりました。」
やった!ナイスだよ、課長!今日だけは感謝!
「じゃ、先に帰ります。じゃ、また。」
と、周りに言って席を立つ。
「今日はどうもありがとうございました。また呼んで下さい。ごちそうさまでした。」
と、みんなに丁寧に頭下げる北野さん。
「え〜何なら、送ろうか?」
と、山川。
「お前が言い出しっぺだから、ダメ」
と、周りから。
みんなの笑い声を聞きながら、その場を離れる。
地下鉄の駅まで歩いて、5分。
この間、何を話そうか…
「あの…真下さんは、どっちの方面ですか?」
彼女が口火を切った。
「あぁ…」
駅名を言うと、
「そうなんですか?なんだ、一緒の方面じゃないですか〜」
「そうなの?」
「前に、住んでいるとこは言いましたよ」
笑いながら言う。
「そうだったね〜あ、こんな遅くて大丈夫?」
「大丈夫です。前のバイト先の人と食べに行くって言ったら、『社会勉強だから』と言って、すんなり承諾してくれました」
と、笑顔。その笑顔には、仕事中と違う、学生らしい笑い方だった。
「そうなんだ〜でも、彼氏とか怒ってないの?」
しまった!酔っているから、つい要らないことを…
「いません」
「え?」
「フラれたんです。あのバイトを終えた次の日に」
「そうなんだ…」
だから、俺に連絡先を…
「じゃ、なんで山川には連絡先を?」
彼女が券売機で切符を待っている横で、聞いてみる。
「あ…まぁ、あまりにも純粋な目で、教えて?と言うんで、仕方なく…ですね」
ガシャン。
改札の扉が開き、苦笑しながら通る。
「じゃ、山川の気持ちは…」
「はい。知っています。一度、ご飯を食べに行って…」
電車が来るまで、少し時間がある。
時間も時間。
ホームには俺と同じ、酔っ払いが、一人いるくらいだ。
「山川のこと…どう思う?」
なんか、さっきからどうでもいいことばかり、聞いてしまっている。
「そんなに…気になります?」
真っ直ぐに見られる。
考えを読まれそうだ。
「いっいや…」
「私は、山川さんよ」
ガーッ!
電車が着いた。
「…乗りましょ?」
彼女の後に続いて乗る。
彼女は入口に1番近い長椅子の端に座った。
「えっと…さっきの続きなんだけど…」
「私の話ばっかり。真下さんは?彼女、いないんですか?」
悪戯っ子みたいに笑う。