投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

年の差
【その他 恋愛小説】

年の差の最初へ 年の差 1 年の差 3 年の差の最後へ

年の差-0-2

ふと、彼女を見る。
彼女を見た瞬間。
心を奪われたのが分かった。
彼女は何一つ、女性らしい仕種はしていない。寧ろ、機械みたいに一定の速さで、キーボードのキーを叩いていた。
ただ、渡されたデータをパソコンに入力する作業を、行っていただけ。
だけど。真剣に取り組む姿に、俺は惚れてしまった。

たまたま彼女が座っていた席の隣が俺だった。
早速、声をかけてみた。
「えっと…派遣社員の方?」
自分の声が震えているのが分かった。こんなにも、緊張するなんて、入社試験の時でもなかった。
「えぇ…アルバイトで今日から来ることになった、北野と申します。よろしくお願いします。」
丁寧に頭を下げ、俺の目を見る。
少し細めの目に、整えられた眉。気持ちだけ化粧された肌は、とても綺麗であることは分かった。形の良い唇に、ライトが反射するのでは?と思うくらいの、首筋。ブラウスの第1ボタンは外され、僅かに見える鎖骨がまた綺麗だ。
「真下です。よろしく」
心臓の音が、彼女に聞こえるんじゃないかと思うくらい、俺は動揺していた。


彼女は仕事は丁寧に、迅速に熟すアルバイトとしては優秀だった。下手したら、そこら辺の社員より仕事出来るのでは?と思うくらいだ。
実際、出来た。でも、彼女は決して「アルバイト」という立場を忘れず働いていた。
その振る舞いが、周りにとっても良かった。


そうこうしてるうちに、彼女がアルバイトを辞める日が近付いてきた。
彼女は、一ヶ月限定のアルバイトだった。


最終日だが、相変わらず、彼女は淡々と仕事と熟す。


俺はこの時点で、彼女に関する情報は、年齢と住所ぐらいしか知らなかった。
デスクが隣とはいえ、俺は今月出張や、外に出てそのまま…というパターンだったからだ。


だから、最後に聞くことにした。連絡先を…

「では、お先に失礼します。一ヶ月という短い期間でしたが、お世話になりました。」
最初に会った時同様、彼女は課長に挨拶をしていた。
「また良ければ、来てくれな」
いつもはぶっきらぼうな課長も、この中では1番若い彼女には笑顔だった。
「はい。では、失礼します」
と、ドアの方へ足を進めた。
それをぼぉーっと見ていた…ら、彼女はもういなかった。
ヤバイ!連絡先聞いてない!
慌てて後を追い掛けた。

幸い、彼女はエレベーターの前で、待っていた。
「あの!」
「…はい。」
緊張をしている俺をよそに、いつも通りのトーンで話す。
「良かったら…連絡先、教えてくれない?」
勇気を振り絞って言ってみた。
すると、彼女は少し怪訝そうな顔をして、
「えっと…山川さんに、連絡先は教えてあるので、聞いて下さい。」
と、言われた。
何か教えることが出来ない理由でも、あるのだろうか?
「あ、そうなんだ…じゃ山川に聞いてみるわ」
間抜けな俺…よりによって、なんで山川が知ってんだろ?
「では、これで。失礼します。」
と、言ってエレベーターで、降りてしまった。


年の差の最初へ 年の差 1 年の差 3 年の差の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前