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快楽館
【その他 官能小説】

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快楽館-1

 突然私の前に扉が現れた。
さっきまでお店なんてここにはなかったのに……。

看板は古く、よく読めない。
なんのお店なんだろう…?

疑問に思いながらドアを開けると、カランカラン…と来客を告げる懐かしい鐘の音が頭上で鳴り響く。

フワッとコーヒーのいい香り…。

「おや、お客様ですか」
カウンターから顔を出したのは30代位の意外に若い男の人。
「喫茶店ですか、ここ?」
キョロキョロしながらお店の中に入る。
だってそれもそのはず。白い漆喰の壁に高い天井。壁には高そうな絵画が飾られ、テーブルや椅子はアンティーク調の家具で揃えられていた。
微かに聴こえるクラシックの音楽が耳に心地好い。

なんか場違いなお店に入ってしまったみたい…。
私の他にお客さんもいないみたいだし。
入ってしまった手前出るに出られず、すこし居心地悪そうにしていると。
「どうぞ」
椅子に掛けるよう促され、フワフワの椅子に腰掛ける。
すると、ウィンナーコーヒーとタルトが運ばれて来た。
「あの、まだ頼んでないんですけど…」
すると店員の人はフワッと微笑んで、
「試しに作った洋梨のタルトなので、試食して下さい。あ、申し遅れました。マスターの榊といいます。ごゆっくりとおつくろぎ下さい」
背の高い榊さんが軽く頭を下げた。

「あ、ありがとうございます…じゃあ、いただきます」
一口食べると、洋梨の独特な風味が口の中いっぱいに広がる。リキュールでも入ってるのかな、少し大人向けの味…。

あれ、だんだん…眠くなってきちゃった…。
フォークがカランとテーブルに落ちる。私の記憶はそこで途絶えてしまった。


「―――ん…」
次に目を開けた時には更に薄暗い部屋の中。
「な、なにこれ…っ!?」
高級そうな椅子の上。
体は裸にされ、足はM字になる様大きく開かされていた。
腕も足も椅子にくくりつけられていて自由に動かせない。
「おや、お目覚めですか」
榊さんが顔を出す。
「ちょっと、何でこんな事するのっ?解いて!」
榊さんはゆっくりと近寄って来て、ペコッと頭を下げた。
「――ようこそ、快楽館へ」
「か、いらく…かん?」
さっきの様にフワッと微笑んで、言葉を続ける。
「ここは時空の狭間に存在する店。この世であってこの世ではない場所……」

な、なに言ってるかわかんない。頭おかしいんじゃないの…?
「人間のアナタがこの店に来たのも何かの縁…。嫌なことなど忘れて、快楽に溺れてみませんか?」

嫌なこと……。
ふと脳裏に浮かんだのは。

彼氏が他の女と絡み合う姿。
彼氏の部屋にいつも通り遊びに行って、インターホンを押した。待っても誰も出ない。
おかしいな…と思いながら、ドアノブを回す。
―――カチャ。
開いてしまった。勝手に悪いかなと思いつつ、玄関に入る。
玄関にパンプス。
廊下の向こうのリビングでは、情事の真っ最中だった――。
頬を一筋の涙が伝う。


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