恋愛模様〜ラブレボ〜-1
佰路〈ハクロ〉高校―。公立校ではあるが県下でも抜群の進学率を誇る学校である。スポーツにも力を入れ、部活動も盛んであり、校訓は『文武両道』。
花もほころび始める春先、この学校では一斉に学力テストとスポーツ検定が行われる。
…ザワザワ。生徒達が集まっている。
「うぉ〜!3年の烏丸さんまた、学力テストトップだよ!すげぇなあ…。」
「しかも!スポ検も文句無しのSAランクだって。相変わらずぶっちぎってるなあ。」
長廊下に学力テストの結果が貼り出されている。集まる生徒達の間では、入学から今までの首席の座を、不動の物としている烏丸氏の話題で持ちきりだ。
『烏丸五良』〈カラスマゴロウ〉新3年生だが、入学したての新入生にも既に名前は記憶されている。超弩級的な存在で、類稀なる才能は佰路高開校以来と言われる。全校生徒から羨望の眼差しを受ける彼が、度肝を抜く行動を起こすのだが、それはまた後からの話。
先ずは、本編のヒロインの登場である。
お昼休みの食堂。そこで、昼ご飯後のデザートを食す女子4人組。話す事は、やっぱり件の彼。
プリンを口に運びながら、
「ビジュアル面も文句無しだし!やっさしいし!やあっぱいいねぇ。最近、清和女学のコと別れたらしいよ!早速校内中の女豹達が狙ってるって。」
と話す緑里〈ミドリ〉。
「でも同じ学校で彼女は作らないみたいよ。振られた一部の強烈な女の子達が、合体してファンクラブ作ったって!芸能人よねここまで来たら」
じゃがりこをつまむ美希〈ミキ〉。
「合体…?合体…。おお!今日九時から『釣りバカ』があるんだった。美希ちゃん、さんきゅ!」
「奈都ってば…。それよりも、遊びでもいいから付き合ってほしいよねぇ!もうそれだけで満足…。」
手を合わせて遠い目をしているのは千遥〈チハル〉だ。
「千遥ちゃん、自分を安売りしたら駄目だよ!てか、みんな彼氏いるのに…。」
『それとこれとは、別っ!!!』
3人が声を合わせて叫ぶ。
「彼氏いても、烏丸さんは憧れよお〜。ってゆうかさ奈都、あんた年寄りくさいのよ、烏丸さん見て何とも思わないの?あの、絶世の美青年を!」
「顔、知らない。」
にっこり。
「…あ・そ。じゃあ、アンタの憧れの人って誰よ?」
即座に奈都は答える。
「エグチヨースケ」
「『救命病棟』の?奈都にしては普通じゃん。今度、江口似の男のコ、コンパに呼んだげるよ。」
最多コンパ主催者の千遥が笑う。
「ちっがう!『湘爆』の江口!」
3人はハア〜っとため息をもらす。
美希がポッキーを口に含みながら、
「何よ。ショウバクって…。奈都のスットンキョーなとこ、あたしらかなり好きなんだけどさ…彼氏、欲しくない?烏丸さんみたいな…」
「欲しいけど、烏丸さんは興味ないなあ。私はもっと、ささやかな彼氏でいいよ。」
緑里、美希、千遥が改めて聞いてみる。
『一番興味ある事って何…?』
にっこり…、笑顔で
「奈良県と釣りバカの新作」
「…やっぱ、奈都って最強よね。ある意味。」
キーンコーンカーンコーン。予鈴が鳴る。
『若佐奈都』〈ワカサ ナツ〉高2。仲良し4人組の会話でもずれた発言をする女の子だ。
進学率トップの佰路高でも、全員が成績優秀ではない。中には平凡な学生もいる。奈都達も普通の成績の女の子達だ。
全国模試、部活動の全国大会で名を上げる生徒達は特進コースに属している。烏丸五良はそのコースでもずば抜けている。奈都は学力テストでは国語、日本史がヒトケタの順位だが、その他の教科は50番以内のポジションだ。スポ検に至っては級外という情けさ。
この二人がどうにかなるなんて事は、佰路高校・教職員、生徒の誰一人思わなかっただろう。
恋愛の神サマ以外は…。
午後の授業も終わり、普通クラスは帰宅時間だ。
「奈都〜。今から球磨工業とのコンパあるんだけど来ない?」
「ごっめん!千遥ちゃん。今から図書室に本返してから、今日お肉の特売日なの!また誘ってね」
奈都は疾風のごとく去って行った…。