jam! 第5話 『寝不足、のち初仕事』-3
「絶対昔の落ち武者の霊かなんかですよ!多分昔この辺りで合戦があったんですって!」
「いや、おそらく昔この辺りに処刑場があってだな、ギロチンで首を斬られた怨念が……」
タイキとサーヤが幽霊の正体について熱く議論を交わす中、僕は全く別の事を考えていた。
「首無しさん、か………」
バイトの内容は『幽霊に関する情報収集』だったか。とりあえず今日の放課後にでも事務所に寄るとしよう。ヒマだし。
……バイト、初仕事だ。
▼▼
「……というウワサを聞いたんですよ」
とある古いビル街、二階堂探偵事務所にて。
学校が終わるなりここへ向かった僕は、早速仕入れた情報を伝えたところだ。
「首無しの幽霊、ね……」
「首無しの幽霊、ですか」
二階堂さんと悠梨ちゃんはそれぞれデスクとソファーで話を聞いていた。
僕も悠梨ちゃんの向かい側のソファーに座って、出されたコーヒーを飲みながら補足した。
「もう何人か目撃者がいるみたいで。なかなか騒ぎになってるみたいですよ?」
「騒ぎになってるって……。何でリショー君は今まで知らなかったんだよソレ?」
「いやぁ、僕は僕で一昨日まで命狙われててそれどころじゃなかったんですよ」
「あぁ、なるほど」
そう言って二階堂さんもコーヒーを飲む。
……先程そのコーヒーに毎度の事ながら砂糖を大量に入れているのを目撃したが、もはやツッコまないことにした。
「にしても首が無い、ねぇ……」
「う〜ん、場合によっては厄介ですね」
……何だろう。
さっきから二階堂さんと悠梨ちゃんは『首無し』というところが何かひっかかるようだ。
「えーっと、首無しってなんかヤバイんですか…?」
「いや、首が無い幽霊自体は問題無いんだよ。リショー君の友達が言うような落ち武者とかならまだカワイイもんだが……」
「あのですね、その幽霊に最初から首が無いのか、それとも後から無くなったかで意味が違ってくるんです」
…………?
よく分からない。
「まぁつまりだ。最初から無いなら別にいいんだよ。本来そういうカタチなんだから。でも後から無くなったってことは……」
「何かに取られた……って事ですか?」
「そういうこと。しかも霊体の頭を刈り取るような奴だろ?ヘタすると……」
そこで二階堂さんは言葉を切った。
……非常に気になる。