jam! 第5話 『寝不足、のち初仕事』-2
「おはよ、サーヤ」
「ぉはよん。お二人さん、朝っぱら深刻な顔をして何の話ー?」
後ろを振り返ると、予想通りの女の子の姿があった。
名前は水無瀬 沙絢(みなせ さあや)。
僕の小学校からの腐れ縁、その2だ。
「タイキの殺人技について話してたとこだよ」
「いや待てリショー。殺人じゃない。レスキュー技だ。正反対じゃないか」
「……お前のはどっちでも似たようなモノだよ」
「あれぇ?何かリショー元気ないね?寝不足?」
「ん、いや、まぁ…そんなとこかな」
サーヤは僕が幽霊が見える事は知らないので、千里の事は適当にごまかす。
「それは大変!……というわけで、ジャーン!お疲れなリショーにコレをプレゼントぅ!」
「ん?何それ?」
サーヤはドリンク剤のようなモノを高々と掲げ、某青いネコ型ロボットのように叫んだ。
「元気の源、マムシドーリーンークゥ〜〜〜!!」
「サーヤ、それなんか微妙に違う!確かに元気出そうだけど微妙に違う!!」
ビンには『絶倫!』と大きく書いてある。
いや、確かに効きそうだけど……僕にどうしろと?
「むむ、リショーはマムシは苦手ですか。…スッポンドリンクもあるけど?」
「それも違う!」
っていうか何でそんなん持ってんだ、サーヤ。
「……おい、リショー」
「ん?何だタイキ?」
「…マムシは体にいいぞ?」
「じゃあお前が飲め!」
やかましく騒いで周囲の生暖かい視線を浴びながら、僕たちは学校へ向かうのだった……。
▼▼
「そういやまた出たらしいですよ、首無しさん」
昼休み。
いつもは学食のサーヤが珍しく弁当だったので一緒に食べることになった……の、だが。
食べ始めていきなりサーヤが切り出したのが上のセリフである。
「は?首……何だって?」
今にも手作りサンドイッチに噛り付こうとしていた僕の手が止まる。
「だから首無しさんですよぅ。ほら、最近噂になってるアレ!」
「ん。学校近くの墓場に出るって噂のやつか?」
「何だタイキ、知ってんのか?」
「いやリショー、むしろ知らない方が珍しいぞ」
学校の近くにはお寺があり、その敷地には割と大きな墓地があるのだ。
家が反対方向だし、何より墓場では幽霊が『見え過ぎる』ので行ったことはないが。
「部活帰りで遅くなった生徒が墓場の近くを通った時にね、首が無い人影がふわふわ浮いてるのを見たらしいんですょ!」
「最初は冗談だと思われてたんだが、その後も二回違う生徒が目撃してな。昨日で四人目か」
「へー。詳しいな、二人共」
「常識だろ。本当に知らなかったのかリショー?」
「まぁ今のとこ目撃されてるだけで害は無いんですけどね〜。なんかそこはかとなくミステリーなカンジ?」
全然知らなかった。
……まぁ最近は僕にもいろいろあったから、仕方ないといえば仕方ないけど。