増えいく行動 第四章-1
そよ風が屋上に流れ七海の髪は空気中を舞っていた。俺と七海はただ無言でみつめあっている。七海は見つめてるとゆうよりは硬直してるに近いかもしれない。屋上は微妙にぽつぽつと水溜まりがあった。夜中に降ったのだろう。その水溜まりに恐らくツルっといったんだろう。そして尻餅を着いたところが見事に水溜まりの上だった。
『…どうしようか…』
色々と疑問が浮かんで来ていたが取り合えず尻餅をついている七海に近付き手を差し延べる。
「大丈…?」
―ダダダタッ!―
俺が言葉を発せようとするのと同時に尻餅を着いた状態から屋上の手摺が背中が着くぐらいまで後退りをした。手摺との距離は約五メートル。そんな距離とは感じさせないほどの速さで後退りをしていた。七海の顔はまだ硬直状態。口が半開きになっていて、驚いたような顔だった。正直驚いてるのは俺の方だが…。
『何故七海がここにいる?盗み聞きをしていたのか?』
俺の頭の中はいつしかその疑問でいっぱいになった。その疑問をあえてぶつけようとしてみた。
「お前盗…」
「してない!絶対してないよ!」
七海は顔を赤らめ俺の途中がけの言葉を全否定して来た。この答え方からわかること…。十中八九、七海は聞いていたと思う。
―キーンコーンカーンコーン―
結構重要な疑問が一つ解けたところで次の授業を告げるチャイムがなる。このままいたとしてもまともに話ができるわけないだろう。そう思い口を開いた。
「取り合えず俺、教室戻るから」
そう言ってドアに手をかけた時だった。
―ドサッー
また何か物音がした。今度はなんだと思い目を音のした方へ向けると、そこには倒れ込んだ七海の姿があった。最初は何かの冗談かと思ったが少したってもピクリともしない。近付き、頭を少し抱えあげて自分の膝に乗せ、軽く頬を叩いた。息はしているが反応がない。つまり…
「気…失ってる…」
今の七海の状態を呟く。
もうすぐ授業だが、七海を置いて教室に行くなんてことできない。ここは取りあえず保健室にでも運んで先生に任せるか…。そんな安易な考えをした。気を失った七海はおんぶしにくかったためお姫さま抱っこした。七海の体は思いのほか軽く、顔の肌はよく見るとほのかに白くきれいだった。抱き上げた事でわかった七海の特徴。そんなところを知ったところでどうこうなるわけじゃないが、なんとなく知ってよかったような気がする。何かと七海のことをもっとよく知ろうと自分では知らず知らずに思っていた。
―コンコン―
保健室の戸をノックした。だが中からは返事がなかった。七海を抱えてるなか、ノックは辛うじてできたがドアまで開けれそうにないと思った俺は肩でドアを開ける。保健室には人気が全くなく、もうすぐジメジメとした梅雨いりなのにも関わらず程よい春のポカポカとしたような温度が漂っていた。整理された机や椅子、保健室にあるものすべて見るものは清潔だった。滅多に保健室に訪れない俺は学校とは思えないそこを見回しながら入っていった。
そこらへんにかけてあった雑巾をなんとか手に取り一つのベットの上にのせ、右足を立てて立ち膝をつき七海の膝の下へ支えをつくり、右手で自分のポケットからハンカチを取り出し雑巾の上に敷いた。スカートの塗れた部分をそのそのハンカチの上に乗せベットの上にそっと寝かせた。
ハンカチだけじゃベットに染みちゃうし雑巾だけだとスカートに汚れがついてしまう。以上の二点の事が起こらないようにとやった行動だと思って貰えると幸いだ。
そこらへんにあった椅子を持って来て、ベットの横に置いて座った。七海を一人にするなんてこともできない。授業は恐らくもう始まっているだろう。この二点の事が二つ一辺に行われてなる行動…。
「授業…さぼり中だな…」
内心別にいいやと思ったりしていた。今の俺の頭の中は黒田に言われた七海の過去の話で一杯だ。そんな状況で授業を受けたって頭の中に入る訳がない。
取りあえず頭の中を整理する。黒田の言っていた事を一つ一つ思い出す事で不思議な点が一つ出て来た。
『中学の頃…転校生きたか?』
黒田情報では中学3年の頃に転校してきて俺に会ったと言う。だが中学3年の頃、転校してきたやつなんて聞いた覚えがなかった。例え先生が他のクラスに転校が来た事を言い忘れていたとしても七海はかわいい顔をしている。即座に噂になり俺の耳にも届くであろう。だがそれがなかった。どうゆうことかわからない。