課長と落ちこぼれ君…1-2
エレベーターが秘書課のある最上階に止まった…
うわぁ…ヤバい。
少し薄暗い廊下なのですぐわかる。
秘書課のドアが少し開いていて、明かりが漏れているのが…
「し…失礼しますっ…」
「…珍しい人が土曜出社ね」
クスッと笑ったのは課長席に座る相良さんだった…
俺は課長席まで歩く…
何だかその少しの空間がものすごく長く感じた。
「どうしたの?」
「い…いや…その…すみません」
相良さんが俺の言葉にプッと吹き出す。
「本当に…あんたは『いや…』とか『すみません』しか言わないね」
「す…すみません」
「ほら、また」
クスクスと笑う相良さんを初めて見た気がした。
多分…俺が怒らせてばっかりだからそんな印象しか持たないんだろうけど…
「何か会社に用なんじゃないの?」
「…え…その…松本から、課長はよく土曜の昼過ぎにいるって聞いたので…
いつも…俺がミスしたところを直して下さっているとも聞きました…」
俺は情けなさすぎて相良さんの顔が見れなかった。
こんな風に言う俺を相良さんは何と思っているんだろう。
下を向きながら唇を噛みしめることしかできなかった…
「松本…余計なこと言ったのね。
あいつもよく土曜にいるから、あたしが仕事してることを知ってる当然か…
まあ、顔を上げなさい」
俺は顔を上げ、相良さんの顔を見る。
いつも怒られているときはさっきみたいに下を向き、唇を噛みしめているだけで…
そんな風に仕事をする相良さんのことなんか考えたこともなかったのに。
いざこの状況を目の当たりにするといろんな思いがこみ上げてくる。
「今日は朝からいたから、やらなきゃいけないことは終わったの。
それに…いつも仕事ができない、できないって怒ってるけど…
あんたのミスは環境のせいもあるでしょう。
すごく忙しいのに秘書課は人数が少ないから1人にたくさん仕事が回ってくるんだもの。
あんたばかりがミスしてるんじゃないんだから。
あたしがいつも怒るのは…仕事できない、できないってウジウジして下ばかり向いてるからよ」
「はい…」
「もう、それがだめなんだって!
自信持ちなさいよ!」
相良さんは立って、俺の目の前にやってくる。
こんな間近で初めて見た…相良さんのこと。
ダークブラウンで、ゆるいパーマのかかった髪。
長いまつげに二重な目。
厚い唇。
パンツスーツがよく似合う長い脚。
そして、ふくよかな胸…