冷たい情愛9 過去-15
あの人は…
私を捨てたわけじゃなかった…
人生のたった三年間…
その時間、彼は私に全てを教えてくれたんだ…
好きだった…
大好きだった…
忘れられるわけが無かった…
幼いなりに、一生懸命だった…
幼いなりに、愛していた…
彼が与えてくれたものは…
大きすぎて、私の全てを構成していて…
私は彼がいなければ…
今歩く道を、生きてはゆけなかった…
今の私…それは決して自分だけで得たものではなかった。
私は、山本先生の隣で泣きじゃくった。
彼が愛してくれたこの場所で…
彼と出会えたこの学び舎で…
12年分、泣いた。
貴方に会いたいと…
あの頃の貴方に会って…
「先生を愛しています」と…
幼なすぎて言えなかった「愛してる」という言葉を…
貴方は冷たくなんて無かった…
貴方は優しい人だった…
二度と会えない…
私が、愛した人だった。
校庭のグラウンドは、日差しが優しく注いでいた。
私の頭には…
その愛した人ではなく…
その愛を黙って見守っていてくれた…
同じく優しい…かつての恩師の温かい手があった。
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一人で歩くと山本先生に伝え、私は校舎を回り始めた。
そういえば…遠藤さんは大丈夫だろうか…。
普段私と同じで仕事に追われ、疲れているだろうに…。
のんびり散歩を楽しんでいるのだろうか。
私は、過去に引き戻された時間から…
ふと現実に戻った。
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