Authorization Lover-VOLUME2--4
もしかして…桃が原因なのか?
いや、まさかねぇ
修平はそんな考えを頭から追い払って会社をあとにした。
人通りに出てすぐに携帯が鳴った。着信は 杉本雛菊 と出ている。修平は内心動揺するのを押えて電話に出た。
「…もしもし。」
「あっ、修平〜?今まだ会社?」
拍子抜けするくらい、明るい声が聞こえた。電話の向こうではザワザワした声が聞こえる。まだ歓迎会の途中なのだろう。
「いや、もう出ましたよ。何かあったんですか?」
「大した事じゃないんだけど…あのさ〜今日来なかったのは私のせい?」
直球な問いだが、気遣っている雰囲気が電話越しから伝わってきた。
「違いますよ。」
修平は相手の顔が見えない事を感謝しながら答えた。
見えていたらきっと苦しい顔を見せていただろう。
「ならいいんだけど。」
雛菊が苦笑しているのが目に浮かぶ。
「その為に電話くれたんですか〜?もう、俺命なんだから〜」
修平はわざと茶化すように言った。
「そうよ。私は修平の事も大事なんだから。」
ドクン。
冷たく馬鹿と言われるとばかり思っていたのに肯定されてしまった。雛菊の声が続く。
「あのね、私は修平の事軽い奴だとは思ってないわよ。優しくて思慮深い事もわかってる。」
「アンタは大事な友達よ。だから…」
雛菊の声に力が篭る。
「修平との関係を壊したくない。」
「雛菊さん…」
修平は胸に暖かいものがこみあげるのを感じた。
「…馬鹿だなぁ。雛菊さんの酒豪に付いてけるのは俺だけでしょ。」
「!」
「また飲みに行きましょうね。それと明日は遅刻しないでくださいよ」
そう言って返事も聞かずに電話を切った。
胸の痞がとれた気がする。修平は晴れ晴れとした気分で帰途へ着いた。
また明日企画部の仲間達と働く為に。
第三話に続く