Authorization Lover-VOLUME2--2
「私のどこが言い訳?」
「全部。っていうか女で俺に此処まで言いあえるのは雛菊さんだけっしょ。そこも良いし…」
修平は手を伸ばして雛菊の顎を引く。雛菊はギョッとした顔で修平を見た。
「…その厚い唇にいつもキスしたいって思ってた。」
修平は雛菊に顔を近付けゆっくり唇を重ねた。そっと重ねるだけのキス。
「…抵抗しないんですね。」
唇を放して修平は不思議そうに雛菊を見る。
「てっきり平手が飛んでくるかと思ってた。」
「抵抗なんかしたら無理矢理もっとする気だったでしょ?」
「あっ、分かりました?」
修平は悪びれずに笑った。
「…で今からどっか行きます?俺の部屋でもいいけど「返事の事だけど。」
修平の軽口を強い口調で遮った。
「答えはNOよ。」
修平は眉をしかめた。
「どうしてですか?今恋人いないんでしょ?」
「無抵抗の女に無理矢理キスする男と誰が付き合うと思う?…それに私は寂しいからって付き合ったりはしないわ。」
修平は頭を掻いて苦笑いした。
「勝手にキスしたのは悪かったです。だけどそれだけ好きっていう事で「本気なら」
再び遮られる。
「相手が嫌がる事なんかしないわ筈だわ。」
修平はぐっと黙った。雛菊は静かに語りだした。
「アンタは同僚としてはいいヤツよ。それは認める。だけどね、私は好きな相手じゃないと付き合えない。」
雛菊はキッパリと言った。
修平が黙っていると雛菊は少し笑って肘で修平をつついた。
「まぁ〜私でなくてもまた企画に可愛い新人来るみたいだし、また頑張ればいいじゃん?ね?」
「そ、そうっすね〜頑張っちゃおうかな!飲みましょう!」
修平はビールをお代わりしてグイッと一気飲みした。雛菊が嬉しそうに笑って手を叩く。
ヘラヘラ手を振って雛菊と駅で別れた後、自己嫌悪に陥った。
軽く告白したように見えたが、雛菊への想いは修平なりに本気だった。企画が宣伝と揉めて色々あった時も側にいたのは自分だ。
雛菊は自分を受け入れてくれると思っていた。
結果は拒絶。
修平は煙草に火を付けた。ゆっくり煙を肺に入れる。会社が禁煙になったのでのんびり煙草を吸ったのは久しぶりだった。
…雛菊さんも嫌がったしな。
好きな人には嫌われたくなかった。修平は苦笑した。軽くしか言えないのは性分だ。今更後悔しても仕方ない事だが。
煙草を珈琲の缶で押し潰した。