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コンフリクト T
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コンフリクト T-9

「俺っちが行くぜ。ひっさしぶりに暴れられるぅ〜」

小林はぐるぐると肩を回し、臨戦態勢をアピールする。彼も白嵐の幹部、実力的には犬山にも折り合うだろう。しかし、飯田が口を挟む。

「待て、春。軽率に応じるべきじゃない。頭、どうします?」

今にも飛び出さんとする小林を制し、飯田は翔に意見を請う。が……

「あれ? 頭っ?」

キョトンとした表情になるや、慌てふためき部屋を見渡す飯田。ソファはおろか部屋中に視線を巡らすが、翔の姿がなかった。

「はれ? トイレかな」

小林も気付かなかったようだ。飯田の脳裏に、まさかが過ぎった。



白嵐高校、グラウンド。
50人近いだろうか、集まった白嵐の生徒達と、犬山達の睨み合いが続いていた。
犬山達は仕掛けて来る気配を見せていない為、白嵐の生徒達も手を出していないが、手を出せないと言った方が正しかった。
これだけの人数でも、犬山は、たった1人で全員を倒してのけるだろう。それは現場に居る者皆が感じていた。
ふとその時、犬山がピクリと反応する。息を潜めた獣が、獲物を見つけた。
ざわめき。白嵐の生徒達の塊が、道を作るように分かたれる。威風堂々と塊を割き、近付いて来る影が1つ。

「来たか。織戸翔」

犬山が待ちわびたようにその名を呼ぶ。やって来たのは、他ならぬ織戸翔だった。

「や、遠路はるばるご苦労さん」

羽織った学ランを風に靡かせ、翔は静かに犬山と対峙する。
犬山は、翔の姿を見るや、笑いを隠せないといった様子でおどけて見せる。対する翔は、僅かに笑みを浮かべたまま。

「本当に女じゃねーか。こんなんがウチに喧嘩売ってんのかよ」

傑作だとばかりに、犬山達は声を出して笑い出す。トップを馬鹿にされ、白嵐の生徒達は当然の如く殺気立つが、翔は至って冷静にそれを制す。

「喧嘩を売って来たのは、そっちのライオンちゃんだろ。そこんとこ勘違いしないで欲しいな、チ・ワ・ワ・ちゃん?」

翔は上目遣いに犬山を見つめ、扱き下ろす。途端に、凍り付いたように空気が一変する。
犬山は、肩を小刻みに震わせながら呟いた。

「その辺も聞いてた通りだな……面白れぇ……」

犬山の目は、餌に飢えた猛犬の如く翔を狙う。獰猛な牙を向けられながら、翔は平然としている。
犬山は初めてポケットから手を出し、一歩踏み出した。既に、咽せるくらいに殺気を発しているのが誰でも分かる。
翔は、羽織っていた学ランを近くの生徒に預け、長袖の開襟シャツの袖を捲る。現れたのは、すべすべと瑞々しい肌のか細い腕。
互いに準備が整ったか、改めて向き合う2人。


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