A FootPoint〜Room-1
今思うと…貴方に教えられた事って意外と多かったことに最近、気付かされた。
でも同時にそれは封じた想い出を抉じ開ける結果で…
わたしは、いつも泪が頬を伝ってた。
そして…捨てた筈の写真を、いつも無意識のうちに手帳から出していたの。
あの言葉を胸に今日も歩いたよ。
辛い時、淋しい時、嬉しい時、楽しい時…いつも貴方は傍らで囁いてくれた。
でも貴方はいない…沢山の言の葉をわたしの手元に残して…。
だからね…来週この家を、この街を出ますー。
数年振りに髪を切った、全てにけじめをつけるために。
数年間伸ばした髪が床にパラパラ散らばるたびに、
貴方との色々な想い出が蘇ってしまった。
ただ切り終えた後で首の辺りが少し寒いかな?と今更後悔。
そんな休日の午後、わたしはずっと後回しにしていた部屋の片付けを開始した。
流石に今日やらないと…というのは来週引っ越すというのも理由のひとつだった。
(まっ、自業自得だけど)
わたしはダンボール箱に引越し先に持っていく荷物と、
ココへこのまま残していくものとを分別する作業から始めた。
2日かけて大掃除をした部屋は、努力の甲斐あって見違えるほど綺麗だった。
(埃を掃除機で吸い取っただけだから…あぁこの本なんて久し振りに見たなぁ)
一冊、一冊、手に取ってその読んでいた当時のことをあれこれ思い出しては、
昔のわたしとわたしが対話をしていた。
単行本以外にも小学校、中学校、高校の卒業アルバム(即封印したけど)まで発掘された…。
そしてひっそりと本棚の片隅に置かれていたのはー
(…小物入れ…?あっあれかぁ…)
古傷が疼く中、わたしは一時作業の手を休め、背もたれにベッドを使い、
小箱に付いていた埃を掃った。
(まっ、放って置いた罰かな?)
自嘲しながら、意を決して私はゆっくり小箱の蓋を開けた。
カポ…乾いた音のみ部屋に流れた。
私の手は震えて、鼓動も早くなっていった。
(少し、本当に少し見るだけーだから大丈夫よ)
そう自分に言い聞かせながら、一番に乗っていた紙切れを取り出した。
流石に7年も経過しているから紙の色は変色してたけど…
そこにはあの日のわたしのーあの人に逢う前の心境が短い言葉で記されていた。
(…見るべきじゃなかったかも…)
始めの一行を見て、すぐ内容を思い出し…床に無造作に置いてしまった。
(何だか過去を清算するのって…こんなにも心臓に悪い行為なのね)
気を取り直して片付けに臨もうと思ったけど…今の告白文の下にあった…
そう、あの時一緒に入れたあるものがあるのか確認したくなって、
わたしはもう一度はこの箱の底を見ることにした。
(あっ、あった…)
思わずほっとしてしまったのは、それがなくしてはいけない唯一の写真だったから。
そう…あの人はあまり写真が好きではなかったからーこうして二人で撮ったのはこれ一枚だけだった。
丁度夏祭りのとき撮ったらしく、わたしは浴衣で写っていた。