A FootPoint〜Room-2
(まだまだ幼さがあるなぁ自分…あの人と並んでると年の離れた兄弟みたい)
クスクスとまるで他人事のように笑みが零れてしまう。
まだ付き合い始めて間もない頃だからかな…
どこかぎこちないわたしとあの人の照れた表情。
あの頃には戻れないけど、写真の中ではまだあの頃は生きてると感じながら、
わたしは作業を再開した。
本当はあの写真、別れたあと暫くは机に飾ってたけど…あまりにも未練がましくて…
捨てることはどうしても出来なかった。
結局、最終的にはこの小箱に封印したわけだけど…。
…多分だけど…もう7年前の自分に聞くことは出来ない。
でも、きっとそうしたんだな、と思いつつこの想いでたちを
どちらへ分類するべきか…わたしは暫く頭を悩ました。
ここへ置けば誰かに見られるかも…だからって持って行くのは…
捨てられたらどんなにラクなんだろう。
そう思いつつ、わたしはまだそんなに荷物の入っていない単行本たちがいる
小さな段ボール箱へ、小箱ごと全てを忍ばせた。
懐かしさに浸っていても、いつかは現実に戻されてしまう。
そのきっかけはわたしの携帯電話の着信音が鳴ったことだった。
「あれ?兄さんから…?」
今はもうこの家にはいない兄からのメールだった。
『最近何かと寒いけど、片付けのほうは進んでるか?
実は一区切りしたら俺の部屋にある市立図書館の本を返しておいて欲しいんだ。
別に今日じゃなくても構わないが期限が切れそうなんだ、早めに頼む。
俺はこれからまた会議があるから…またな』
また今日も研修でこき使われてるんだろうなぁ…。
ハァ、と溜息をついて兄さんの言っていた本を探しに二つ向こうの部屋へといった。
たまには我侭くらい引き受けないとね、兄さんも忙しいから。
(相変わらず整頓されてないーここからどう見つければいいのよ!)
暫く家捜しのように少し乱暴に探していくと…帯に××図書館と書かれた
ラベルが貼ってある本が三冊も見つかった。
(どれも推理小説だし…分厚いっ)
敢えて作者は見ずに、わたしは部屋へ戻ると気分転換に
図書館に行こうかと思った。
『これから返しに行ってくるよ。片付けは兄さんの部屋より綺麗になったからね。
じゃあ兄さんも風邪には気をつけてね!』
メールもいつ見るかは判らないけど、一応送るだけ送ってわたしはトートバッグに
本と一緒に何故か小箱に入っていた写真を…手帳にしまっていた。
(逢いたい、でも…もしかしたら今は一番逢いたくない相手―でもココにいるとは
限らない、大丈夫…すぐ戻ればいいんだし…)
片付けは駅から帰ってきたあとでも十分片付く量だと判断して、
わたしは複雑な心境の中、家を後にした。