out side #01〜始まりは図書室の中〜-3
* * *
「はい、どうぞ。この本でいいですね」
那弥はそういって探してきた本を末木の居る机の上に置く。
「ん。ありがとう」
「...というか先生。一体あとどれくらい時間かかるんですか?」
「ん〜......そうだなぁ〜............」
末木はそう答えたっきり待てど暮らせど答えを出さない。
完璧に調べ物に集中しているようだ。
軽く溜息をつくと、暇つぶしのために、那弥は資料室の中の本棚の本を見て回る事にした。
なるべく音を立てないようにそっと歩く。
しかし、本棚に目をやるものの、面白そうな本なんて一つも無い。
辞書みたいなものばかりだ。
......と、その中に。
一冊だけ明らかにこの場所に不釣合いな本を発見した。
「......」
那弥はチラリと末木の方を盗み見る。
末木は相変わらず調べ物に没頭している様子だ。
那弥が盗み見ていることすらにも気付いていないようだった。
那弥はソッとその本を手に取る。
パラパラとページをめくる限り、どうやら官能小説。
(...なんでこんな本がこんなとこに......
ていうか、此処学校の図書室なのに)
別に見たいとか、見るつもりがあるわけじゃなかったけど、
あまりにもこの部屋に不釣合いな本の存在に、那弥はクスリと笑う。
「なになに? そんなのに興味あるんだ? 相沢は」
突然の背後からの声に、バタンと本を閉じる。
しかし、閉じても無駄だった。バッチリ表紙が丸見えである。
末木はいつの間に那弥の背後に寄ってきたのか、表紙を那弥の後ろから覗きこんでいる。
そしてひょいとその本を持ち上げるといった。
「笑ってなかった? 何想像してたの」
末木は面白そうにクスクス笑う。
「べ、別に、偶然見つけただけです......! この部屋に不釣合いだなーって...思って......」
何も後ろめたい事はないはずだった。
しかし、何だか恥ずかしくって那弥は末木の方を振り返れずに居た。
末木は尚も続ける。
「すると......相沢は、この本を見てえっちな事想像してたんだ?」
耳元で末木が声を発するため、クスクスという笑い声と同時に、耳元を息が掠める。