ゆきのした。-3
「うひゃあ…ホント懐かしいね、どこも変わってないよ」
「…………」
「…透…どうしたの?」
「……ん。 いや、なんでもない」
中に入ってみたものの、なんだろう、虚無感ってやつかな。
あの時は…やっぱり、小さかったからかもしれない。
姉ちゃんも感じないのだろうか。 この店が狭くなってしまったということに。
「でさでさ、透は何を買うつもりなの?」
心做しか、瞳が輝いて見える。 すごい楽しそうだ。
「予定では………ネクタイ…とか」
「えー! ここまで来てネクタイー? そんなんじゃつまらないって!」
「どうしろと……」
「もーちょい高価な物にしようよ」
ここは姉ちゃんの言う通りかもしれない。 今になって考え直そうとしてる僕もいる。
さすがにネクタイはね…。
姉ちゃんだって真剣に考えてるだろうし……
…っていうか…そうだよ!
「いやいや! 姉ちゃんは何を買うんだよ」
「……」
「やれやれ」とため息を吐く姉ちゃん。
そして、呆れたとでも言いたげな表情を送ってきた。
…この空気は何?
「まったく…透はまだまだ幼稚だね」
「…幼稚…?」
「そ、幼稚。 あたしが言いたいのは、" 女性の気持ちをよーく勉強しなさい "…それだけ」
「え…意味が」
「それだけ!!」
…あれ、僕が悪いの? どうも理不尽な気がするんですけど…。
さて、現在の所持金は千円札一枚。
何を買えば良いものか、正直悩む。
姉ちゃんは姉ちゃんで「オトメ事情だから」なんて言い残してどこかに行っちゃったし。
ネクタイは罵倒されちゃったからな…。
暫しほっつき歩いていると、ある物がふと目に映った。
それは僕が生まれてくる前から流行っていた特撮アニメ『セキトリマン』に出てくる
悪役キャラクター『ゴツァン』のフィギュア…と、その近くに『100円』と
書かれている値札が置かれてあった。