ゆきのした。-19
「……でさ、こう言ったんだよ。 あの格好良さは異常だわ、父さんを捨ててでも会いに行くべきかも〜……ってよ」
「あははっ、やっぱり透のお母さんだね」
「…あれ、そういや由紀奈は聞かされてねーの? あの…ゴツァン漢話」
「あ〜…一回聞かされそうになったんだけどね、あたしは女の子だからわかんないや…って言ったら悪魔みたいな顔つきで…」
「…なんとなくわかった。 …しかし…未だに気になることがあるんだよな」
「どんな…?」
「なんで母さんは…あんなにゴツァンが好きだったのかなって…せめて最後に聞いときゃ良かったな」
「………んーとね…例えば…そう!」
「…?」
「透が生まれてから…翌日とかに、初めてお母さんはセキトリマン…というか『セキトリマン 第二十七張・悪と愛と義を貫く怪人、その名はゴツァン!』を見て、それでお母さんの中でゴツァンが『特別』になったんじゃないかな…」
「…………」
「それに……お母さんは" ゴツァンの話しか "してくれなかったんでしょ?」
「…そうか! 今思えばそうだ……あの人……セキトリマンも含めてゴツァン以外のキャラクターは全然知らなかったしな…ゴツァンだけしか教えられてないな…」
「…………ふふ」
「それにしても…おまえすげーなー! なんだよ、もしかして母さんから聞いたとかか?」
「ただの推測だよ…」
「そうか………やっぱり、今でも俺には理解できないな」
「……」
「あの母さんがあんなことをしたのは…何かしら裏があったからなんだ…」
「…………透は本当にお母さんが好きなんだね」
「……ああ…………いっ、いやいやいやそんなわけねーだろ! 大体姉貴もそうだった…いや…今もだけど、透〜大好き〜って言ってたろ!」
「そ……そんなっ、言ってないよ!」
「何とぼけていやがりますか…自分から添い寝してきたのも姉貴なんだぜ?」
「……っ!! う〜〜〜…」
「そうそう、次の休みの日にしょうたん…将太が来るからさ、それまでにそのブラコンっぷりを治しといてくれよ。 こっちが恥ずかしいんで、ね」
「…ば………ばかぁっ!!」
「……もう大学生だろ…すぐ泣く癖も治せって…」
母も父もいない生活だが、大切な姉と大切な親友と大切な+αがいる。
俺は、充実しつつも充実してない緩い毎日を適当に過ごそうと思う。 無論、
目標を持って。
ゴツァンの様な義理と人情に溢れたちょい悪な大人を目指せばいいんだろう?
やってやるさ…また、貴女に会える日を願って。
〜fin〜