ゆきのした。-10
「そ、それブロッコリー! いらない! いらないから!」
「え…姉ちゃん、何を言ってるの? これハンバーグだよ?」
「ちがっ…違う! ブロッコリーでしょ!」
「…ああ、遂に末期か。 ハンバーグまでブロッコリーに見えちゃうなんて…ブロッコリー症候群って恐ろしいね…」
「な………ばかっ!!」
「わかったよ。 ハンバーグあげるから、弁当弁当」
「う…ん」
「…はい、と。 これで」
「ブロッコリーも一緒!? もうやだー!」
…まぁ色々あって姉ちゃんは泣いちゃったけど。
純粋に二人きりの食事は楽しかった。 上手く言えば、新鮮だった。
ここでいつもの流れならば、食事が終わった後に姉ちゃん、僕、父さんの順で
お風呂に入るはずなのだが…。
困ったことに、いつまで経っても姉ちゃんがお風呂に入らない、もとい入ってくれない。
「先に入っていいよー」とか言ってましたが、なんだか『何か企んでるオーラ』が
見えたのは、たぶん網膜の残像のせいだろう。
しかし僕は断固として、先には入らない。
三分毎にこちらをチラチラと見て、しかも五分毎に「入らないのー?」とか
聞いてくるものだから。
雪柳 由紀奈とは、正にわかりやすい人物の鑑なのだ。
「あのさ…いや、姉ちゃんにとっては面白いかもしれないけどね、あまりにも、その…過激なのはやめた方がいいと思うんだ」
あえて率直に言わない。 僕なりの優しさである。
「…えっ!? い、いきなりどうしたの?」
一瞬だけ声が裏返ったのは本人も自覚してるはず、動揺の証だ。
友達の前でもこんな感じだったら……ちょっと心配になってきた。
「ええと……はぁ…。 なんでもない、気にしないで。 お風呂行ってくる」
「あ…………うん」
…なんだろうか。 何度も言う様だけど、今日の姉ちゃんはどこかおかしい気がする。
衣服を脱ぎながら考える。