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雪の夜
【悲恋 恋愛小説】

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雪の夜-1

デスクに置いた携帯が震えだす。
私はキーボードを叩く手をを休ませると、携帯を開いた。

彼からのメール。随分久しぶりなのに、中身はたった一文。


《9時にいつもの場所で》


たったこれだけ。
私は返信も送らずに携帯を閉じると、再びキーボードを叩き始めた。
ここ、数ヶ月のすれ違い。理由は分かっている。ただ、私はそれを認めるのが恐かった。




仕事の合間を縫って、アイツへのメール。
だが、いつまで待っても返事がこない。
我ながら短い文章。
しかし、気のきいた言葉など思いつかない。昔はそんな言葉、いくらでも言えたのに。
仕方なく必要事項だけを伝えた。
勘の鋭いアイツの事だ。何かを読みとっただろう。

オレはデスクを立つと、窓越しに外を眺めた。鉛色の空は低く垂れ込め、冷たい風が街路樹をなびかせる。
まさに冬の風景だ。

オレは軽い伸びをするとデスクに戻り、アイツとの事を頭の隅にしまい込むと再びキーボードを叩き始めた。




夕方。私は会社から自宅に戻ると、無意識にシャワーを浴びていた。

バカ……

これから聞かされる彼の気持ちは十分分かっているハズなのに、いつものように身体を洗う私。

情けない……

私はバス・ルームを後にして身支度を整えると、刺すような寒さの中へと歩いていく。



いつもの場所の喫茶店。

私は約束の時刻より早めに着いた。中を覗くが、彼はまだ来ていない
いつもの席が空いたままだ。

私は、いつもの席に座ってミルク・ティーを飲みながら、初めて買ったハイライトに火をつける。

ひと口吸った途端、激しく咳込む。周りの客は、私を一瞥すると、一様にクスクスと笑っている。
私はそんな事おかまいなしに、吸い続けた。
ニコチンが効いてきたのか、頭がクラクラする。

彼がいつも吸ってるタバコ。




約束の時刻。オレはようやく仕事から解放されて、いつもの場所へと走る。

会社近くの喫茶店。

オレとアイツの思い出の場所。


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