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雪の夜
【悲恋 恋愛小説】

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雪の夜-2

高校から付き合いだして、初めて入った。それが今では常連だ。
ただ、最近、まったく行っていない。会社帰りに行くチャンスはいくらでも有った。

だが行けなかった。

アイツとの思い出の場所に、ひとりでは行く気になれなかった。




扉が開いた途端、暖房の入った店内に冷気が駆け抜けた。
私は振り返る。

彼だ。

その瞬間、私の心臓は激しく脈打ちだす。私は平静を装おうとする。

アナタに気持ちを悟られないようと。




オレは息を整えると、扉を開けて店内に入る。
いつもの席で、オマエはオレを見つけると薄く笑っていた。
その顔は、どこか悲し気だ。

ゆっくりと、いつもの席に近寄ってオマエの対面に腰かける。

口の中がやけに渇く。
オレはウェイターにブレンドを頼んだ。

「すまないな。仕事にかまけて会えなくて」

オマエはまた薄く笑って首を横に振る。

「仕方ないわ。私達、社会人だもの」

そう言いながらオレの頬を撫でると、

「少し痩せたね……」




アナタは私の言葉に苦笑いを浮かべると、〈そうかな?〉と言って胸元から取り出したハイライトに火をつける。

言いにくい事を持ちかける時にでるアナタのクセ……

アナタの前に灰皿を渡した。




「オマエ、タバコ吸ってるのか?」

差し出された灰皿を見て、驚いたオレは思わず訊いた。

灰皿の吸い殻にわずかに残る口紅の跡。オマエは、少しおどけた表情を見せるが、どこか悲し気に映る。

〈初めて吸ってみたの。あなたの真似して……〉

そう言ってオマエは俯く。オレも黙ってタバコを消した。
お互いにその先を言おうとしない。

ウェイターがブレンドを運んで来た。オレは一口飲むと、沈黙を破った。

「そう。で、どうだった?」

「全然、美味しくない。もう吸わないわ」

「そうだな……」




途切れる会話。昔はいくらアナタとお喋りしても尽きる事が無かった。
別々の友人。共通の友人。趣味、嗜好、つまらない言い争い。そして、お互いの夢を語り合った。


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