冷たい情愛7 side 紘子-6
舌だけでなく、歯の生え際…頬の内側…口腔内の全ての粘膜に舌を這わせる彼。
唾液が飲み込めない…
グチャグチャと音がする私と彼のキス…
キスなのか…
口腔内でさえ、食い尽くされる。
彼は昨晩もそうだった…私を壁際まで追い込み、逃げ場を無くして攻めてくる。
その圧迫感が、体の刺激を更に興奮させてくる。
彼は私の頬に大きな手のひらを当て、口腔を舌で攻め続ける。
顔を少しも動かすことが出来ない。
このまま本当に食い尽くされてしまうのではないか…
それでもいいと思った…
抵抗も出来ず…そのまま彼に食い尽くされて果ててしまっても…
それは本望なのかもしれない…
必死に呼吸をしようとするが、浴室の湿気が邪魔し…苦しくなる…
彼は息も乱さず唾液を更に舌に絡め、私の口腔を遊び続ける。
彼が遊ぶ場所は変われど…胸も足先も首筋も口腔も…全てが快感だった。
普通の性交の順序では決して味わえない興奮と快楽だった。
愛を語らないけれど、煩雑なわけでもない彼の目と指と舌…それもたまらなく快感なのだ。
シャワーが髪にかかり…雫が落ちる彼の髪は…
仕事で会う彼とは全く逆の…獣としての彼を感じさせた。
「ん…んぐ…」
苦しい…でも限界まで苦しんでみたい…もっと…
苦しい…
彼は私の口腔から舌を抜いた。
一気に酸素と湿気を吸い込んだ私は、激しく咳き込む。
涙で目が潤む。
ぐったりして体に力が入らない。
それなのに彼は冷静なほど静かに呼吸をしている。
彼はシャワーを止めた。
そして何も言わずに私の腰と首に手をかけ、私を床に仰向けに寝かした。
床は湯が薄く張り、温かかった。
彼は手を私の肩の横につき、私の顔のすぐ真上に自分の顔を持ってきた。
彼の髪から少し冷たい雫が落ちてくる。