投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ヒトナツ
【コメディ 恋愛小説】

ヒトナツの最初へ ヒトナツ 16 ヒトナツ 18 ヒトナツの最後へ

ヒトナツB-3

翌日の朝早く(とは言っても10時頃だが)ドアをノックする音が聞こえて目が覚めた。
「ふぁい」
「渚だけど」
「…どーぞ」
相変わらず控え目にドアが開き、渚が顔を覗かせる。
「あ、寝てたんだ、ごめん」
「んぁ、いや」
寝ぼけた頭を必死に覚醒させる。


「健吾なら別にいいわよ」


「うわっ!」
昨夜のことを思い出し、一気に正気になる。
「……体調でも悪い?」
いつの間にか近付いていた渚は、心配そうな顔で俺の顔を覗き込む。
「っ!なにもない……」
「ならよかったわ」
渚は大袈裟というほどのため息をつく。
いつもおかしいが、今日はまたどうしたんだ?
「……で、なんの用だ?」
「あ、昨日この話しようと思ったのに言えなかったから」
「ん、それでなに?」
「あたしを観光に連れていってほしいのよ」
「はぁ?」
まあ、言いたいことはわかるが。
「……お願い、日本が今どんな風になっているか気になるし」
こいつ、そんなことどうでもいいんじゃないのか?
「……まあいいけど」
「よかった」
渚はニコッと微笑んだ。
「……早く!」
「は?」
「早く準備してよ!」
え?え?
「……今日なのか?」
「今日よ」
「てめ、急すぎんだろ」
「だって昨日言うつもりだったのに、健吾が変なこと言い出したからでしょ!」
たしかにそうだ。
「……まあいいけどよ」
ゆっくり起き上がる俺を見て、渚は満足そうな顔をしていた。
「じゃあ、あたしも準備するから」
そう言って渚はそそくさと出て行った。

ま、せっかく帰ってきたんだし。
たまには渚に付き合ってやるか。

俺は急ぎ足でバスルームへと向かっ


***

二人はかなりの時間、電車に揺られている。
そりゃあそうだ。こいつ、都会に行きたいって言い出すし。
桜と先日デートしたところよりもさらに遠くだ。
だが、不思議と面倒に感じない。
今、俺の隣でもたれかかって爆睡してやがるこいつは、初恋の人で幼馴染みなんだから。
背は高いくせに、ほんと子どもみたいな寝顔しやがって。
やばい、段々とドキドキしてきた。

俺は雑念を振り払い、窓から見える景色に集中した。


ヒトナツの最初へ ヒトナツ 16 ヒトナツ 18 ヒトナツの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前