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ヒトナツ
【コメディ 恋愛小説】

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ヒトナツB-4

到着。

ビル、ビル、視界のほとんどがビル。
さすが都会だ。
何度訪れても、相変わらず地元とのカルチャーショックを受けてしまう。

「すごいわね」
渚も驚いていた。
「でも、アメリカはもっとすごいんだろ?」
「……あたしが住んでたところはそうでもなかったから。それに、日本がこんな風に変わってるのがびっくりして」
「俺らが小さいときはこんなじゃなかったもんな」
「そうね」
「…はは、なんか年寄り臭いな。買い物すっか」
「うん」


***

「お前なあ、買い過ぎだよ」
俺は苦笑いしながら買い物袋を持ち直した。

二人は、と言うか渚は、数時間かけて大量に服や化粧品、バッグなどを購入した。

「いいじゃない、アメリカに戻ったら何も買えないしー」
「なぁにほっぺ膨らましてんだよ」
「もうっ」
俺は空いた手で渚の頬をつついてやる。
なんか本当、背が高いのに心はちっこくて可愛らしいんだよ。こいつは。

っと、ごめんよ桜。別にそんなつもりはないんです。

でも……
「アメリカに戻ったら、か」
「お?あたしが帰ると寂しいのかい?」
渚はニヤニヤと笑う。
「……ばーか」

俺らは幼馴染みなんだよ。
何度だって帰ってくればいい。

俺はたしかにそう言おうとしたが、なぜか口は動かなかった。

「……そうだ渚、お前さ、酒飲んだことあるか?」
「……まあ、ちょっとだけならあるわ。それが何?」
「雑誌に載ってたんだけどな、このバー行ってみねえ?」
雑誌の切り抜いたものを渚に見せる。
「いいわね。じゃあおばさんに夕食はいらないって伝えておくわ」
「ああ」
渚は家に電話をかけているようだ。

よし。
これで桜といつか行くときのための練習ができる。
全く、俺も悪よのう。

クックック。

「なに気持ち悪い笑い方してるのよ。行こう」
「おわっ」
渚は俺の腕に自分の腕を絡めて引っ張りだした。

こいつはお洒落なバーより、駅前の居酒屋だな。
なんて笑いながら、店内へ足を進めた。


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