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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第15章-21

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手になじむ重み。北斗と七星のずっしりとした存在感が、飃を我知らず微笑ませた。

…敵50体を目の前にして。

「過去をいじるのにはどうやらしくじったようだ…だが、片割れよ、お前一人を相手にするなら、赤子の手をひねるも同然…」

相手は中級の澱み。それを率いる蛇妖。

「ほう…そうか?」

手に持った武器を構えもせずに、ぼんやりと立つ。油断でも、余裕でもない。

挑発だ。

油良は不安に思った。この者たちが姿を現すなり、彼は油良に対して「絶対に手を出さず、離れているように」言った。だが、いくら飃が強いといっても、これだけの澱みを相手にするのは危険なように思われた。

やがて、油良が見ている前で、飃はゆっくりと動き出す。



そして油良は気づいたのだ。

飃がさくらと出会うまで、一体何を糧に生きてきたのかということに。

それは…飃の顔に表れていた。

復讐だ。

一族の恨み、過去に味わった痛み、恐怖、無力感、絶望…。

それら全てを奴らにも味合わせてやるのが、この上もなく「楽しい」という、あの表情。

粟立つ肌があったのなら痛いほどに立っていただろう。油良は自分が、あそこでなす術もなく消されてゆく澱みたちを見つめている愚かな蛇妖でなくて本当に良かったと心から思った。

すべての澱みを、踊るように切り付け、片付けてゆく飃は、美しいとさえ形容できる。一息も乱さず、彼は蛇の前に立った。

「どうだ?」

蛇は、返事も出来ない。



その時…

沼が淡く光って、さくらが水面に顔を出した。一瞬そちらに気をとられた飃の隙をついて、蛇はさくらに尾を伸ばし、巻きつけた。

「きゃあっ!ちょっとなによこれっ!」

思いがけない人質に、蛇はほくそ笑む。そしてなぜか、笑える状況とはとてもいえないのに、飃まで笑っていた。

「助けがいるか?さくら。」

さくらが微笑み返した。

「あーら、お優しいこと。」

さくらは蛇の手の中で手を掲げ、呼んだ。

「九重ーっ!」



すると、手の中に九重が姿を現した。


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