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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第15章-18

「それで、娘をかどわかし易くするためにその父を殺して、少女の精神を傷つけた、というわけか…子供の陽気は、お前たちのような影のものにとっては毒だからな。」

酷く静かな声で、飃は言った。蝦蟇が耐えられなくなって叫ぶ。

「そ…そうだ!その通りだ!たのむぅ・・・勘弁してくれェえ!」



「しいーっ…」

人差し指を口に当てる。

「声を上げるなよ…」

「ひ・・・!」

地面が再び白く光る。その中に、北斗七星の破魔の力を湛えて。



―天円地方

 律令九勝

 吾今下筆

万鬼伏蔵

 急々如律令



―万鬼を調伏させたまえ

律令の如く速やかに―

白い光の中にしぼんで消えてゆく蝦蟇を見もせずに、さくらの部屋の窓を見上げる。あの子はこの物音で起きてしまっていないだろうかと。物音は虫の声だけ。夜の星たちの声を代弁するようにしんしんと降るように鳴いている。



池のほうまで歩いていくと、澄んだ水鏡に向かって話しかけた。

「油良。こちらは終わった。」



「…承知した。」

池の向こうから返事が返ってくる。すると、激しい風に波立つ池が急に静まり、淡く光った。飃は最後にもう一度だけさくらの部屋を振り返ると

「八条さくら…この己に出会う時まで…北斗七星の守りがあらんことを。」

そう言って、目に見えない守護の呪でさくらを包んだ。次に二人が出会う時まで、澱みの恐ろしさに涙を流すことがないように。

そして、姿を消した。


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