飃の啼く…第15章-15
坊は夜風に聞いてみた
あの灯(ともしび)は何ぞやと
風は答えていったとさ。
あの灯は汝(なれ)の父、
あの灯は汝の母。
毎夜ふたりはああやつて
おまへの夜をてらすだろ
あの灯は夜の星
おまへをてらす夜の星』
さくらは、その不思議な声に聞き入って、いつの間にか泣き止んでいた。
「なんて言ってるの?」
「さくらのお父さんもお母さんも、今は空の星になって、さくらが悲しいときにも光って、お前を守ってくれているんだ。そういう歌だよ。」
「ほんと?」
さっきまで涙に濡れていた瞳が余計に輝く。
「じゃあ、お空のずうっと上に行ったら、逢える?」
「どうかな…いつか、お前にもわかる日が来るよ。」
そう言って、柔らかい彼女の額に、口付けた。幼い子供特有の、甘い香りがする。
「おじちゃん。」
そう言って、さくらは枕の下をごそごそと探った。
「これ、あげる。」
渡してくれたのは、木彫りの腕輪だった。絵の具で色とりどりの模様が描いてある。
「図工の時間に、ママに作ってあげたの。でも、おじちゃん優しいから、あげる。」
「…ありがとう。さくら。」
少女はにこっと微笑むと、そのまま眠りの中に落ちていった。
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確か油良は言っていた。
「おそらく奴らは、あなた方をかど勾引(かどわ)かし易いように、お互いの心のもっとも危うい時期を狙ってくるじゃろう。」
その通りだった。