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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第15章-13

「あいつって、誰ですか?」

「ああ…最近この村で子供がさらわれる事件が起こってましてね…なんとも物騒なもんです。こいつと来たら用心するどころか、探し出して倒すなんていいだすし。」

父親らしい心配を、息子は一笑に付した。

「だって父ちゃん、子供ばっかり相手にするなんてきっと弱虫だよ!」

私は考え込んだ。子供をさらう…いやな予感がする。そいつは片っ端から子供をさらっているだけなんじゃないか?いつか飃に行き当たるのに望みを掛けて、この村中の子供をさらってしまう気かもしれない…。



どっちにしろ、見逃すわけにはいかないわ。



険しい顔でご飯を食べる私を、お母さんはじっと見つめていた。
飃とお父さんがご飯の後の稽古に向かった後、私はお母さんに聞かれた。

「あなた、狗族の血が混ざっているのね。おめずわしいわ。」

しまった。と思った。べつに秘密にしておかなきゃいけない理由は無いけど、成り行きでついてしまった嘘にいまさらながら後悔する。雪解さんは、眠りに落ちた小さな息子を腕の中で揺らしながら、尚優しげに私に問いかけた。

「本当のこと、教えてくださる?」



私は話した。飃が立派な戦士になっている事。戦い、私や、他のみんなを助けてくれる事。そして、何のためにここに来たか。



「ごめんなさい…騙すつもりは無かったんです…。」

「ええ、ええ…いいのよ…。」

そう言って、笑った。呪いのせいでやつれたお母さんは、笑顔のお陰で少しだけ健康に見えた。

「そんなにえらい子になるのなら…今夜は一緒に…寝てやろうかしら…」

苦しかった。全てを話してしまえないのは。数年後に起こる、獄と、沢山の澱みの襲来。出来ることなら、ここから皆居なくなってほしかった。どこか別の、もっと安全な場所に連れて行ってしまいたかった。何なら外国だっていい。けれどそれは同時に、混乱と、未来の崩壊を招く。油良さんに絶対にしてはいけないと、何本もの釘を刺された約束事だった。私は、次に言うべき言葉が見当たらず、その夜はいつの間にか眠ってしまっていた。


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